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戒名もお墓もいらない“無墓社会”が広がる 経済問題も理由

 かつてはご先祖様を供養することが大切にされ、“墓を守る”という考えが浸透していた。しかし都市化と核家族化が進み、墓に対する考えも風化しつつあるという。

「私の骨は田舎のお墓に納めないで、できれば子供たちの傍に置いてほしいとお願いしています。先祖代々の墓は管理維持費が年間48万円もかかるし、『だれそれの何回忌だから法要しますよ』と引っきりなしに振込用紙を送ってくる寺なので未練はありません」。

 そう語るのは、4年前に遺言書を作成したという看護師の犬伏多恵子さん(42)。

「戒名もいりません。生きているいま、慣れ親しんだ自分の名前をそのままあちらの世界に持っていきたいんです」(犬伏さん)

 一方で墓を守れないことに痛痒を感じる人も地方を中心にまだ少なくない。

「自分はお墓を守るという意識が強いけど、ひとり娘は東京で嫁いでしまいました。そうそうお墓参りにも来れないだろうし、墓が自分で途絶えるかと思うと悲しいですね。今後、お墓をどうするか、お寺にも相談してますけど…」(中国地方に住む農家・58)。

 かつては強固だった「家」の意識が揺らいでいる。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)の著者で宗教学者の島田裕巳氏は、今後は“無墓社会”が広がっていくと予想する。

「都会を中心に、家というものがはっきりしたものでなくなってきています。“家を継ぐ”という観念が急速になくなっている。これに少子化が拍車をかけています。無縁社会に加えて経済的な問題もあり、お墓のない人はこれからどんどん増えてくるでしょう」

※女性セブン2010年12月9日号

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