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パート社員の通勤途中の事故は労災になるが寄り道してはダメ

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「パートの通勤途中で事故に遭った場合でも、労災として認められますか」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 妻はパート社員として週3日働いています。その妻の交通事故の問題です。通勤途中の歩道で、後ろから来た自転車にぶつけられて、全治1か月のけがをしました。このような通勤途中の場合など、就業時間外の事故でも、労災と認められるのでしょうか。なお、妻は私の健康保険の被扶養家族です。

【回答】
 奥さんが、通勤として合理的な経路をたどって歩いているときに追突されたということであれば、労災の対象になります。パート社員であっても労働者です。労災保険法は労働者を使用する事業を適用事業とし、労働者を雇用する事業を開始すれば当然に労災保険関係が成立することにしています(強制適用事業)。

 雇用主は保険関係成立の届け出を10日以内にする義務があります。仮に奥さん以外に働く人がおらず、雇用主が労災保険の対象外だと思って届け出なくても、労災の適用があります。除外されるのは、5人未満の労働者を雇う農水産業を営む個人だけです。従って奥さんには労災保険の適用があるのです。

 労災保険の給付を受けることができるのは、業務上の負傷、疾病だけでなく、通勤災害も含まれます。就業時間外でも通勤途上の事故であれば問題ありません。ただし、原則として住居と就業場所との間の往復を合理的な経路、方法で行なっている間に発生したことが必要です。

 途中で寄り道した場合、その寄り道の間とその後の経路上での事故は対象にならないので注意してください。もっとも、日用品の購入などで店に立ち寄ったりしても、通勤途上であることを否定されません。

 治療費について健康保険の適用が問題になりますが、健康保険法55条で、労災保険の給付があるときは労災が優先すると定められています。その手続きについては勤め先の担当者と相談されるか、労働基準監督署で相談してください。

 労災保険からは医療費のほか、休業補償などが受けられますが、慰謝料などの精神的損害の補償はありませんし、休業補償も満額ではありません。こうした不足分については、自転車の運転者に別途損害賠償請求できます。

※週刊ポスト2011年6月17日号

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