国際情報

震災支援ほか中国「微笑み外交」の本音を櫻井よしこ氏喝破

 東日本大震災に際し、中国は15名の救援チームの派遣や支援物資などの援助を行なった。だからと言って、彼の国の覇権への野望はいささかも衰えてはいない。激烈な外交の現場において、それとこれとは別問題なのだ。中国の狙いをジャーナリストの櫻井よしこ氏が解説する。

 * * *
 5月21日に来日した温家宝首相は被災地を訪問し、被災者と膝を交えて交流しました。被災者の輪の中に入って「友好ムード」を演出したわけです。

 昨年9月、温氏は、尖閣諸島周辺の日本領海を侵犯して海上保安庁に逮捕された船長の「即時・無条件」の釈放を要求し、「釈放しなければ中国はさらなる対抗措置をとる。すべての責任は日本側が負わなければならない」と我が国を恫喝しましたが、その時とはまるで別人のようです。

 中国が日本に対して「微笑路線」に転じた理由のひとつは、震災で日本が世界から同情を集める中、強硬路線をとることは国際的に中国のイメージを損なうとの計算でしょう。

 もう一つの理由は、米軍の存在感が増したことです。震災後、「トモダチ作戦」で行なわれた米軍と自衛隊の共同オペレーションは実戦さながらでした。日米関係は非常に緊密化しました。そんな状況下で強硬外交を続けることは、得策ではないと考えたのでしょう。彼らは「尖閣はいずれ奪い取れる」と考えており、今は巧みな柔軟戦術で日本を手中に収めることを考えているのです。

 例えば中国政府が運用するソブリン・ファンドです。中国の巨額の貿易黒字と外貨準備高が強力な武器になります。中国政府は資金をさまざまな民間資金の形にして、あらゆる分野で日本を買い漁っていると言われています。

 以前から指摘されている日本各地の山林や土地はもちろん、日本のあらゆる企業や技術に触手を伸ばし、買い叩き、買い占め、日本を侵食しているのです。

 微笑外交の後ろでは、強硬姿勢も見せています。6月8~9日、中国の艦隊が宮古島と沖縄本島の間を通過し、軍事演習を行なっていたことがわかりました。

 これに対し、日本政府は「公海上」のこととして黙認しましたが、昨年10月、韓国海軍の哨戒艦沈没事件を受けて米韓が黄海の「公海」上で合同軍事演習を行なおうとした時、中国は中国近海に外国の海軍が入り、演習をすることは、中国の「国民感情を害する」と猛反発しました。完全なダブルスタンダードです。日本も「国民感情を害する」と抗議すべきです。

 また、中国は東日本大震災で大変な苦況にある日本に対し、レアアースのスムーズな輸出を約束しましたが、実際には輸出規制は強化されたままです。言葉と行動はまったく別物で、中国の本質は変わらないのです。

※SAPIO 2011年7月20日号

関連記事

トピックス

羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
入社辞退者が続出しているいなば食品(HPより)
「礼を尽くさないと」いなば食品の社長は入社辞退者に“謝罪行脚”、担当者が明かした「怪文書リリース」が生まれた背景
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
入社辞退者が続出しているいなば食品(HPより)
いなば食品、入社辞退者が憤る内定後の『一般職採用です』告知「ボロ家」よりも許せなかったこと「待遇わからず」「想定していた働き方と全然違う」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン