国際情報

大前研一氏 海外では半年くらいのモラトリアムは当たり前

多くの日本の大学の入学は「春」と相場が決まっているが、このたび東大が「10月入学コース」の新設を発表した。この新制度だが、大前研一氏は大きなメリットがあると指摘する。以下、大前氏による解説だ。

* * *
東京大学が来年度から、主に外国人留学生を対象とした「10月入学コース」を教養学部に新設する。入試は書類と英語による面接などだけで選ぶ東大初のアドミッション・オフィス(AO)形式で、授業は英語のみで行ない、日本語が話せなくても学位が取得できるようにする。

世界で一般的な秋入学に合わせて外国人留学生を増やすことが狙いで、東大は日本人学生の入学時期についても、海外留学を促して国際化を加速するため、秋に移行することを検討しているという。

その背景には、世界的な大学間競争の激化と東大の地位低下への危機感がある。英QS社の世界大学ランキング(2010年版)で東大は24位に甘んじ、アジアのトップを香港大学(23位)に譲った。そこで、台頭著しい中国、韓国、シンガポール、台湾などの大学に対抗するため、留学生を増やすことで国際競争力を高め、グローバル人材を育てようというのである。

逆にいえば、東大は現在の「春入学・春卒業」による世界との半年のズレが、国際化の障害になっていると考えているわけだが、入学時期はクリティカルな問題ではない。

海外では半年くらいのモラトリアム期間は当たり前である。たとえばドイツでは、高校卒業後や大学の途中でワンダーフォーゲルなどの長旅に出る学生が多い。

むしろ半年間のズレは、学生にとってデメリットよりもメリットのほうが大きいと思う。私自身、東京工業大学の修士課程を3月に修了し、9月にMIT(マサチューセッツ工科大学)の博士課程に留学したが、その半年は留学準備がゆっくりできる貴重な時間だった。

海外からの帰国時も、半年のズレはさほど障害になっていない。外国の高校を6月に卒業して日本の大学を受験する場合、帰国してから入試シーズンが始まるまでの半年間は受験勉強に集中できるからだ。慶應義塾大学(湘南藤沢キャンパス)は、春・秋どちらでも入学可能だが、多くの帰国子女は翌年の春入学を選択している。

要は、頭が固い東大がようやく重い腰を上げただけの話であり、単に秋入学に移行しただけではグローバル人材が育つわけがない。重要なのは、学生の「世界で活躍する」というアンビションをどう育てるのか、ということである。

※週刊ポスト2011年9月2日号

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン