広瀬和生氏は1960年生まれ、東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。30年来の落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に接する。その広瀬氏が真打ち「単独昇進」について解説する。
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9月15日に落語協会が、来年春に春風亭一之輔が真打に昇進すると発表、「二十一人抜きの大抜擢」と話題になっている。
昨年まで落語協会では毎年春と秋に四、五人ずつ真打に昇進させるのが通例だった。ところが今年は一人も昇進が無く、来年春、大勢の先輩を追い越して一之輔だけが真打となるというのだ。
当人には大変なプレッシャーだろうが、これは「大英断」だ。一之輔には既に、そんじょそこらの真打を上回る人気と実力がある。落語ファンは昇進を待ち望んでいたし、落語界の活性化に繋がる人事であるのは間違いない。
「二十一人抜き」以上に重みを持っているのが「単独昇進」だ。何しろ上野、新宿、浅草、池袋の都内四軒の寄席に国立演芸場を加え、計五十日間、一之輔が主役の披露興行が行なわれるのである。数人の新真打が持ち回りで主役となる披露目とはケタ違いの一大イベントだ。
※週刊ポスト2011年10月28日号