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やくみつる 何か褒めるのに「スゴイ・ヤバイ」は話にならん

漢字を勉強するにあたって、大前提としていっておきたいのは、「漢字は暗記科目ではない」ということ。漢字の問題集なんかで、ふだん使いもしないような言葉を暗記したところで、なんの意味もないんですよ。

私の漢字の勉強法はいたってシンプルです。本を読み、知らない言葉が出てきたら調べる。それだけ。

私は戦前や戦中の本を読むのが好きで、文学作品だけでなく相撲評論なども読むんですが、当時の漢字の使い方は今とは全く違うから、辞書がなければとてもじゃないけど読めない。首っ引きで読むことで必然的に漢字を覚えていくわけです。暗記のために読むのではなく、自分が読みたい本を読んでいくなかで、必要に迫られて覚える。まずは使用例に接することです。

あとは自分自身、その言葉をなるべく使うようにする。それはしゃべり言葉でもいいし、書き言葉でも、なんならメールでもいい。日常生活で使うなかで、漢字の知識が自然と増えていくわけです。

漢字を覚えることの魅力は、「語彙数が増えていくこと」。語彙を多く保つ=それだけ表現が豊かになるということです。これは別に書くことを生業としていようがなかろうが関係ない。何かを褒めるのに、なんでも「スゴイ」「ヤバイ」では、お話にならない。自分の心情を伝えたり、細かい描写をするには、語彙を増やしていくしかないんです。

私は、原稿などの文字はすべて手書きで書いています。日頃からパソコンではなく自分で書いていると随分違うのかもしれませんね。書くという作業を怠ってはいけない。

※週刊ポスト2011年11月11日号

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