学生時代、早大野球部に在籍するも腕前は捕手10人中10番目。それでも野球の仕事は諦められず……会社員を経て雑誌『野球小僧』のライター業に辿りついた。そんな苦労の末、全国を旅しながら噂に聞こえた剛腕投手の球を受け、ミットの“激痛”を文に認めるという人気企画に出逢う。人呼んで“流しのブルペンキャッチャー”、安倍昌彦氏が今年のプロ野球ドラフト会議の逸材について語る。
* * *
高校生の中で「いの一番」にソフトバンクから指名された宮崎日大高・武田翔太。これは、本物のダルビッシュ二世だ。
今さら説明不要な、あれだけの大投手だから、ゆめゆめ軽率に使ってはいけない表現なのだが、この3月、ブルペンでおよそ50球受けて、その場で監督さんに、
「本物のダルビッシュ二世ですね!」
と言ったら、
「中学で初めてみた時から、ダルビッシュだと思ってました」
九州の男はお世辞など言わない。よいものはよい、悪いものは悪い。最大級の賛辞だった。
188センチ。身長では「本家」に及ばないものの、それでも十分の長身から、腕が体に巻きつくように投げ下ろす豪快な投球フォーム。その角度、低めの伸び、両サイドに投げ分ける指先感覚。変化球だって、5つも6つも持っている。
パワープラス精度、そして、世話になった両親を自分が背負っていこうとする生活意欲。素質と環境。伸びる要素は揃っている。
※週刊ポスト2011年11月18日号