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適切な睡眠は6~9時間 短すぎても長すぎてもうつ病のリスク

 人間が生きていくうえで、絶対に欠かすことができない睡眠。フジテレビ系バラエティ番組『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの、認知脳科学の専門家・澤口俊之さんが、脳科学的に「睡眠」について解説する。

 * * *
 とても身近な問題で、多くの研究が行われているにもかかわらず、まだまだ謎が多いのが「睡眠」のメカニズムです。詳述すれば一冊の本が書けるほどですが、今回はごく簡単に説明したいと思います。

「睡眠時間は、1日7時間が理想的」という話をよく耳にしますが、実際に本当なのかどうかは難しいところです。その理由のひとつに調べ方の問題があります。睡眠に関する調査は、アンケートや質問形式で行われることが多いため、回答は「自己申告」になります。しかし、本当に睡眠状態にあるかどうかは脳波を測定してみないとわからないものです。

 例えば、自己申告の睡眠時間が8時間なのに、脳科学的に調べた睡眠時間は6時間、もしくは7時間だったというケースは多く見られます。また、脳科学的な理想の睡眠時間は6時間~6時間半というデータもあります。

 睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠という2種類の眠りの状態があります。私たちは、一晩の眠りでレム睡眠とノンレム睡眠を交互に数回繰り返しています。

 余談ですが、夢はレム睡眠のときに主に見ます。ただし、私たちが思い出せるのは、直前のレム睡眠のときに見た夢に限られていて、一晩に見た夢を全て思い出せるわけではありません。

 では、レム睡眠とはそもそも何なのでしょう? 一言でいえば、大脳があまり休んでいない睡眠です。レム睡眠とは進化的に古い睡眠で、大脳が未発達な時代にはレム睡眠しかありませんでした。

 ヘビやカエルも眠りますが、彼らの眠りは全てレム睡眠です。哺乳類が現れて大脳が発達することで、進化的に新しい眠り、つまりノンレム睡眠が現れてきました。この睡眠は大脳を休ませるためのもので、ノンレム睡眠では大脳皮質は休息しています。

 レム睡眠の主な役割は体を休めることにあります。そのためレム睡眠の際には体は休息していても、大脳皮質はあまり休んでいません。レム睡眠の間、大脳皮質は不充分ながら活動しているため、瞼を閉じていても眼球が動いたりするのです。

 夢を見るのも大脳の活動によるものですが、その活動が起きているときのように充分ではないので、まさに訳のわからぬ中身になってしまいます。また、レム睡眠から目覚めた際、体のほうはまだ休んでいて筋肉がうまく動かせず、「金縛り」という状態になることもあります。

 さて、睡眠には、レム睡眠→ノンレム睡眠→レム睡眠→ノンレム睡眠…という周期があります。この周期が適切で、かつノンレム睡眠が深ければ「質のよい眠り」になりますが、ノンレム睡眠が浅いと脳の休息が不充分なため、さまざまな問題が出てきます。

 つまり、睡眠は「長さ」と「質」が重要なのです。「7時間が理想的」というのは目安でしかありません。個人差もあり、6時間が理想的な人もいれば、9時間がよい人もいます。さらに、寝るタイミングや起きるタイミングも重要で、早く起きすぎても遅く起きすぎてもいけません。

 さまざまな研究結果から、適切な睡眠時間は6~9時間の間だとみなしていいでしょう。この範囲より短すぎる睡眠も長すぎる睡眠も、共にうつ病になる危険性を高めることがわかっています。

※女性セブン2011年12月15日号

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