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「鉄道の持つ力」感じられる3冊 震災、戦中・戦後、美景

2011年発行本の中から厳選し、2012年を読む【テーマ別書評】。評論家の川本三郎氏は、「『鉄道』の持つ力」として、この3冊を選ぶ。

(1)『震災と鉄道』(原武史/朝日新書)
(2)『戦中・戦後の鉄道』(石井幸孝/JTBパブリッシング)
(3)『日本鉄道美景』(田中和義・今尾恵介/新潮社)

* * *
安全か安心か。地震の直後、すぐ鉄道を走らせるのは安全の点で問題はある。しかし鉄道が走ると人々は安心する。JR東日本は安全を優先したのに対し地下鉄や私鉄は安心を選んだ。原さんは安心のほうをよしとする。

原さんは従来の鉄道おたくとは違い鉄道を歴史、社会、現実問題のなかで広くとらえ、鉄道論に新風を吹きこんだ。(1)でも地震後の日本社会で鉄道はどうあるべきかを真剣に(時に怒りながら)考える。示唆に富む好著。

鉄道は戦時下でも走っていた。空襲のさなかにも走っていた。鉄道の底力である。(2)は国鉄マンが書いた鉄道讃歌。広島、長崎の原爆投下直後にも鉄道が走り、それが人々に勇気を与えたという事実には感動する。

日本の四季折り折りのなかを鉄道が走る。(3)は実に美しい鉄道写真集。日本の自然のなかを一両だけで走る鉄道がけなげに見えるのは、鉄道が日本の近代を支えてきたからこそだろう。

※週刊ポスト2012年1月1・6日号

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