ライフ

被災地住民「一人の親友より沢山の友人が必要だと気付いた」

ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などにも取り組んでいる。震災後には被災地をサポートする活動を行っている鎌田氏は、「絆」という言葉についてこう語る。

* * *
2011年は、つながりながら、助け合いながら、必死に生きようとした年だ。「絆」という言葉がよく聞かれた。絆は、人と人との断つことができないつながりをいう。でも、絆は、ときに自由を妨げたりもするので絆に縛られ過ぎないようにしたいものだ。

震災後、南相馬市の巡回診療で出会った家族は「おばあちゃんがいるので、置いては逃げられない」と家族で留まる決意をした。別の家では、寝たきりのおばあちゃんが、息子と嫁に「孫を連れて逃げろ」と命令を下した。自分が足手まといになるので家に置いていけというのである。

息子さんたちは、おばあちゃんの枕元に、たくさんのおむすびを置いて出て行った。出ていく家族は、どんな思いだったのだろう。その後、おばあちゃんは、避難所の体育館に連れていかれ、みんなが面倒をみていたという。

寝たきりのおばあちゃんがいたから逃げられなかったのも家族の絆であり、孫が大切だから私を置いて逃げろというのも家族の絆である。もちろん、日本中からも支援がよせられた。世界中から応援に来てくれ、たくさんの絆ができた年でもあった。

携帯電話やパソコンでつながっているだけでは、孤独は癒せない。自分が困難の中にいるときに、話を聞いてくれる人が、傍にいてくれるかどうかが大切なのである。今回の震災で息子を亡くした女川町の母親が言った。

「いままで子どもには、どんなときでも話ができる親友を1人持つことが大事だと言ってきました。でも、今回震災に遭って、あいさつできる隣近所があること、煮物を持っていったり、もらったりする仲間が必要だと気付いた。これからは、たくさん友人がいるほうがいいんだよと、子どもたちに言うつもりです」

※週刊ポスト2012年1月13・20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン