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負担が大きかった前縦隔の腫瘍手術 新技術で切開部1か所に

前縦隔(ぜんじゅうかく)にできる腫瘍は主に胸腺腫で、悪性が疑われる場合は手術が必要だ。従来は胸骨を切る開胸手術だったが、大きな傷が残り、術後の痛みも長く残るため負担が大きい。

そこで胸骨のみぞおち側にある剣状突起付近の腹部を切り、そこからカメラや鉗子などを入れ、二酸化炭素を注入して腫瘍を摘出する手術が考案された。重症筋無力症の胸腺摘出手術にも適応が可能だ。

縦隔は胸椎(背骨)と胸骨、肋骨の空間にある左右の肺に囲まれた場所をいう。縦隔には心臓、気管、大動脈、免疫をつかさどる胸腺、神経など重要な臓器が収まっている。縦隔は体を横から見て気管より前が前縦隔、後方が後縦隔、気管が左右に分かれるあたりが中縦隔、これより上が上縦隔、下が下縦隔と区分されている。

縦隔腫瘍はこれらの部位にできた腫瘍の総称で、部位により腫瘍組織の種類が異なる。前縦隔腫で一番多いのが胸線腫であり、良性では経過観察をする場合もあるが、悪性やそれが疑われる症例では手術が必要だ。藤田保健衛生大学病院呼吸器外科の須田隆准教授の話。

「前縦隔腫の手術は、初期でものどからみぞおち付近まで切開し胸骨も切って開くため傷が大きく、骨を切るので体の負担が大きいのが問題でした。ここ数年は胸腔鏡による手術を実施していましたが、より体に優しいものとして、腹部を1か所切開するのみで手術を行なう単孔式胸腺摘出手術を開始しました」

(取材・構成/岩城レイ子)

※週刊ポスト2012年1月27日号

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