国内

大前研一氏 原発安全対策に必要なのは「電源と冷却源確保」

福島第一原発の事故について政府は収束宣言を出した。しかし原発に対する安全対策はいまだまとまっていない。元原子炉設計者でもある大前研一氏は、約2か月の緊急調査で、原発設計時に“たまたま当初の設計指針から外れた”電源設備が結果的に被害を抑えていた事実を解明した。大前氏が今後とるべき安全対策について提言する。

* * *
私は昨年12月21日、ボランティアでまとめた「福島第一原発事故から何を学ぶか」最終報告書を細野豪志原発相に手渡した。これは10月28日に提出した中間報告書に、関西電力などが採用しているPWR(加圧水型原子炉)についての調査・分析を加えたものである。

PWRの場合は自分が発生させた蒸気で冷却する装置が何重にも付いているので、今回と同じ事態になってもバッテリーが1つ確保できれば、東京電力のBWR(沸騰水型原子炉)よりは冷却が確保できて生き残る確率が高い、という結論になった。

ただし、これまでは新潟県中越沖地震の柏崎刈羽原発や今回の福島原発、女川原発、東通原発、東海第二原発などBWRしか大地震を経験していない。PWRが大地震に襲われた時にどうなるかは、未知数だ。

したがって、今後の安全対策はPWRもBWRと同じである。冷却さえできればメルトダウンは起きないのだから、設計思想を「確率論」(確率が低ければ想定しなくてよいという発想)から「どんなに大きな地震や津波に見舞われても(あるいは旅客機が墜落したり、テロリストに襲撃されたりしても)原子炉の電源と冷却源を確保する」に転換し、電源と冷却源を「多様化・多重化」する。つまり、非常用のディーゼル発電機やバッテリーを高所に設置するだけでなく、異なる原理の電源と冷却源を用意し、その数も増やせばよいのである。

※SAPIO2012年2月1・8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン