ツアー2戦目(ヨコハマタイヤ・3月9日)こそ予選落ちしてしまったが、女子ツアーの開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」(3月4日)を制した斉藤愛璃(22)の人気が急騰している。プロデビュー戦ながら愛くるしい笑顔を振りまき続け、優勝を手にした瞬間、男性ファンの心をわしづかみにしてしまったのだ。
彼女は幼い頃から天然な一面があった。神奈川県厚木市から第一戦にかけつけた母のみゆきさんが明かす。
「田んぼの水を飲んで近所のオバサンに止められたり、エレベーターや電車の扉に挟まれたり(笑い)。とにかくおてんばでしたね」
父・壮士さんの影響で8歳からゴルフを始めた斉藤は毎日、手の平がマメだらけになるまで、自宅の庭のネットに向けて練習を重ねた。彼女が「プロを目指す」とコーチでもある壮士さんに告げたのは中学生の時。
「うちは普通のサラリーマンなので、遠征費などを捻出するのは大変でした。パートに出ていた妻も看護師として復職し、共働きで応援してきました。どうしてもあの子の夢をかなえてあげたかったのです」
華々しいデビューを飾った彼女だが、ここまでの道のりは平坦ではなく、プロテストにも昨年3度目の挑戦でようやく合格した。ゴルフ担当記者がいう。
「ツアープロの低年齢化が進み10代の頃から活躍する選手が多い中、彼女には高校時代まで際立った成績がなく、環境も恵まれていたわけでない。高校卒業後は名門として知られる横浜の程ヶ谷CCで研修生をしながら、プロテストを目指した。今時のプロとしては珍しい苦労人です。競技は異なりますが、市民ランナーとして注目を集める男子マラソンの川内優輝のような、いわば市民ゴルファーです」
※週刊ポスト2012年3月30日号