国際情報

中国焼肉店でカルビが大人気 「硬くてまずい牛肉」の印象覆す

 中国人の旺盛な食欲がマグロやワインに向かっていると言われたのはほんの数年前。それ以降も年々膨張し続ける13億人の欲望は、日本人にとって身近な食材や原料にさらに及んできている。そこではいま、何が起きているのか、中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏がレポートする。

 * * *
 週末の北京の繁華街。多くの客で賑わう店内には、肉を焼く煙が立ち込めている。店員の活気に満ちた声が飛び交う中、皿に盛られた牛肉が次々と運ばれてゆく……。

 近年、中国の都市部を中心に、こうした「焼き肉レストラン」が増えている。特に中国の若者や駐在外国人に好評で、店にはそれぞれ日式、韓式、ブラジル式などのスタイルがあり、繁盛している店の多くは日式や韓式だという。

 客のほとんどが注文する人気メニューは「五花肉」――日本で言う「カルビ」である。ほかにも「牛舌」(牛タン)や「菲力」(ロース)など、日本でおなじみのメニューが好まれている。この店を訪れた中国在住の日本人ビジネスマンによると、カルビには脂がしっかり乗っており、味もなかなかだという。

 2人でビールやマッコリを飲みながらお腹いっぱい食べて、合計400元(5000円程度)。一般的な中国人にとっては決して安くはないが、それでも焼き肉店は多くの中国人で賑わっている。

 これまで、中国で肉と言えば豚肉であり、牛肉は鶏肉や羊肉より下に位置付けられていた。それには理由がある。中国で肉牛生産が始まったのは最近(1990年代以降)のこと。しかも、肥育される牛の大半は肉食向きではない交雑種で、肉質が悪く、硬くて美味しくないからだ。中国国家統計局の集計によると、2009年段階で1人当たりの年間食肉消費量は豚肉20.5kg、鶏肉10.47kgに対して、牛肉は2.38kgと依然として少ない。

 ところが最近、中国の肉食文化に変化が見え始めた。日本のように多くの種類の肉をロースターや炭火で焼いて食すスタイルが広く認知され、焼き肉レストランは連日ほぼ満席だという。北京には、日本の有名店の名前をもじった「叙上苑」という店があるほか、大都市を中心にチェーン展開している焼き肉店もある。中国で一般的だった「硬くてまずい牛肉」のイメージは、「脂の乗ったカルビ」によって覆されつつあるのだ。

※SAPIO2012年4月25日号

関連キーワード

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン