夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、ご主人(57歳)が印刷会社勤務の奥様(57歳)。定年後の生き方を模索するご主人に、いささかウンザリのご様子です。
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「芸事はいくつになっても続けられるから、定年後は音楽をやるよ」学生時代に弾いたことがあるというギターを物置から探し出し、「腕は落ちてないはず」と、同居してる長男夫婦と3歳の孫、そして私をリビングに集め、『禁じられた遊び』を弾き始めた主人。途端に息子夫婦は耳を押さえ、孫は泣き出し、“禁じられた演奏”に。
これには主人もショックだったようで、「年齢を重ねるほどに円熟味が出るのは落語だな」と、故・古今亭志ん朝さんのCDを買ってきて猛練習し、「甥っ子の結婚式で一度披露することにしたから」。私も出席しましたけど、話し出した途端、総スカン。いえ、上手下手ではなく、演題が『品川心中』で、「結婚式に女郎と客の心中噺なんてとんでもない」ということに。
それでも懲りない主人は「『孫』でヒットした大泉逸郎を目指すぞ」と、今度は暇を見てはカラオケ店に行き練習していたようですが、それも先週から「やめた!」。理由を聞くと、「機械がおかしいんだよ!」。採点システムで、どの曲を歌っても60点台なんだそうです。
いえ、おかしいのは機械じゃなくて、アナタの声と音程だと思いますけど!
※週刊ポスト2012年4月27日号