ライフ

新入社員宴会芸は心技体総動員の隠れた人材育成と専門家指摘

 新入社員にとって最初の壁と言えば、宴会芸。とくに5月以降の宴会は、自分たちが幹事になるからなおさらだ。この宴会芸、社風や部署の雰囲気を理解しつつ、場の空気を読みつつ、しかもちゃんと笑いをとるのはなかなか難しい。その実態を、作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が、自らの体験も交えて解説する。

 * * *

「マルクスもケインズもぶっ飛んだよ」

 このセリフを聞いて、ピンときた人は、かなりの島耕作マニアです。そう、島耕作の上司、中沢部長が新人時代に京都営業所で宴会芸をさせられまくった体験を振り返ってボソりと言った言葉です。ちなみに、彼、大学院卒なんですよね。大学院まで卒業して、いきなりお座敷相撲や裸踊りなどをさせられるわけです。強烈な体験ですなあ。もっとも、マルクスもケインズも宴会芸くらいでぶっ飛ばない巨人だと思うのですが。

 新入社員にとっての最初の壁と言えば、宴会芸です。最初の歓迎会などもそうですが、むしろ芸を考えなければならないのは5月以降の宴会です。自分たちが幹事になりますからね。

 この宴会芸ですが、社風や部署の雰囲気を理解しつつ、場の空気を読みつつ、しかもちゃんと笑いをとるのはなかなか難しいんですねえ。学生時代のノリだけでは受けなかったりするわけであります。

 さらに、新入社員には勘違い野郎も多いわけですよ。消費財メーカーに勤める中川君(仮名)は、元学生団体の幹部。いわゆる意識の高い学生の臭いを漂わせる勘違い野郎です。新入社員歓迎宴会に専務取締役がくると聞いて、大ハッスル。これを機会に問題提起しようと、会社の現状を揶揄するネタを連発。場が凍りついたことは言うまでもありません。

 一方で、いかにもみんながやりそうなネタをやられても、無難すぎるのですよね。女装してAKB48の真似とか、もうやめろと言いたくなりますよね。EXILEなんかやられたところで、中年たちには人数の多いラッツ&スターにしか見えないわけですよ。

 宴会芸は心技体が総動員されるものなのですね。空気を読みつつも、若干の捨て身感がある。さらには、上司たちのフィードバックを真摯に受け止める。これが宴会芸のポイントでしょうか。職場の雰囲気を知るためには、先輩たちに聞いておくのもありですね。ネタがかぶることを極度に嫌う人もいるわけです。

 東大院卒で、金融機関に進んだ羽田君(仮名)はそこで言うと、絶妙なバランスで芸をやりました。彼は金魚を2匹用意し、1つをパンツの中、おしりのあたりに隠しておきました。みんなの前で飲み込み、「金魚は死んでしまったのか?ああ、生きてました!」とパンツから取り出しました。いやあ、さすが東大生、あったまいい!

 ただ、今時の宴会芸はコンプライアンスには注意ですね。すぐにセクハラだと大騒ぎになります。実際、「小島よしおの“そんなの関係ねえ!”は着衣の上おこなうように」と通達が出された会社があります。実話ですよ。

 私も社畜時代は、営業の締め日が近いのによく東急ハンズに行ってグッズを買い、恥ずかしい芸をしまくったものです。まさにマルクスもケインズもぶっ飛びましたが、だんだん楽しくなり、しまいには頼まれてもいないのにやる男になってしまいました。こうやって人間って腐っていくわけですね。

 とはいえ、いまや宴会芸は会社における人材育成のヒドゥン・カリキュラム(隠されたカリキュラム)とも言われています。まあ、楽しくいきましょうよ。

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン