夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、洗剤メーカー勤務のご主人(51歳)。奥様(48歳)は「歴女」で、特に戦国武将についてはかなりの知識があるそうです。
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関ヶ原の戦いに興味があるらしく、「石田三成家臣の島左近と、秀吉の五大老だった宇喜多秀家にセックスアピールを感じるの」と、小説を読みあさっていました。確かに、島左近は「治部少(三成)に過ぎたるものが二つあり。島の左近と佐和山の城」とまで称された名武将ですし、宇喜多秀家は関ヶ原の戦犯として八丈島に流されます。ふたりとも悲劇のヒーローで、女房が男の魅力を感じるのもわかります。
ところが今年になって、「やっぱり、一番のヒーローは大道寺政繁様よ」といい出したのには「ん?」です。「北条家の宿老で、川越城の城主なの。イブシ銀のような中年の魅力がステキ!」と女房。
この前の休みの日は「大道寺様ゆかりの地に行ってくるわ」と、ひとりで埼玉の川越へ出かけ、
「来週は北条家ゆかりの小田原へ行くの。名物のかまぼこを買ってきてあげるから、お留守番しててね」
「かまぼこはいいけど、その大道寺政繁って、どんな悲劇のヒーローなんだよ? 小説でも読んだのか?」
「違うわ。慶次に殺される時の悲しい表情がたまらないの」「慶次?」「パチンコ『花の慶次』よ!」
「ハァ?」
よく聞くと、『CR花の慶次』というパチンコ台で、主人公の前田慶次と大道寺政繁の対決モードがあり、慶次が勝つと大当たりなんだとか。「お前、オレが会社で働いてる時に、パチンコに行ってたのか!」「政繁様には負けてもらいたくないのに、でも、負けないと大当たりしない。お金のために、愛する政繁様ではなく、慶次に『勝て!』と応援する私。この複雑な女心があなたにはわからないの?」って、まったくわからんよ!!
※週刊ポスト2012年5月18日号