夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、ご主人(56歳)が衣料品メーカー勤務の奥様(54歳)。ご主人は飛行機大嫌いの高所恐怖症です。
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「鉄の塊が空を飛ぶなんて信用できん!」が主人の口癖なんですが、ついに年貢の納め時というか、長男がハワイで式を挙げることになったんです。新婦の希望らしく、息子からも「お父さん、頼む!」と頭を下げられ、渋々、式に出席することに。
生まれて初めての飛行機ですから、「とても素面では乗れない」と、機内でウイスキーをガブ飲みしてグデングデンに。嫁になる新婦が「お義父さん、大丈夫ですか?」と声をかけた途端、「うるさい、ブス! 誰のせいでオレがこんな怖い思いをしてると思ってるんだ!」とキレたんです。
慌てて私が「ごめんなさいね、酔っ払ってるだけだから」と取り成すと、主人は「酔っ払ってるから本当のことをいうんだよ!」。
嫁はというと、両手がワナワナと震えています。ハワイ滞在中もしっくりいかず、嫁の対応はずっとぎこちないものでした。
帰国して2か月経っても、嫁は一度も我が家に遊びに来ません。息子が一人で来て、「お父さん、きちんと謝ってくれよ!」というんですが、「ハワイでのことは何も覚えてない!」って、私は覚えてるわよ。帰りの空港で「乗りたくない! オレはこのままハワイに永住する!」と涙ぐんで駄々をこねたアナタの姿を!
※週刊ポスト2012年6月1日号