ベネッセコーポレーションが運営する、難関海外大学進学者向けの予備校「Route H」(ルートH)は、ハーバードやイェールといった最難関8大学へ日本人留学生を送りこむ実績をあげている。たとえば、ハーバードには7人の正規留学の日本人学生がいるが、このうち4人がルートHの出身者だ。
ルートHのOBで、「ハーバード大とイェール大に同時合格」したスーパー受験生がいる。彼の名は古賀健太氏。大分生まれの福岡育ちで、灘校に学んだ。現在はイェール大2年生だ。
「いま、人工知能の研究をしています」
高1までは東大志望だったが、高校の先輩がハーバード大に合格したことを知り大いに発奮、栄光をつかんだ。この先輩は北川拓也氏で、今もアメリカの大学院で物理学を研究している。
古賀氏は7歳から10歳までをオーストラリアで過ごしたという。
「だからといってTOEFLやSAT(アメリカ版センター試験)で合格するレベルにはほど遠かったです。毎日、スターバックスへいき、外国人家族の隣に座って英会話を聞き取りリスニングの勉強にしました。英語の参考書も例文を全て暗誦できるようにしました」
古賀氏が入試で驚いたのはOB面接だった。
「ハーバード大からは、都市銀行の巨大なフロアに呼び出されました。一転してイェール大は都内のスタバ(笑い)。しかも担当OBはジーンズ姿。ここで4時間たっぷりインタビューを受けたんです」
彼は11歳からマジックをたしなみ、今はプロのマジシャンでもある。そういった「勉強以外の勉強」に熱中したことも、海外難関大合格の一助となった。
「受験勉強といっても、具体的な対策の立てようがありませんからね(笑い)。僕の場合、エッセイは先生に添削してもらいませんでした。そんなことをしたら、自分の文章や表現じゃなくなってしまうからです」
アメリカへの日本人留学生の実数は、2万4000人とピーク時の半分以下。そんな今こそチャンスだと関係者は口を揃える。
「直に海外大学の学部に入学しようと焦る必要はありません。現地の“ELS”(語学学校)で語学力を養ってから入学するという手もあります」(ベネッセコーポレーションの藤井雅徳氏)
日本の大学は学力低下や経営難に揺れている。もうしばらく経てば日本の大学にハナから見切りをつけ、海外へ勇躍する高校生は珍しくなくなるのだろうか。
※週刊ポスト2012年6月8日号