膵臓は胃の後ろあたりにある十二指腸に接続する細長い臓器で、消化酵素が含まれる膵液とインスリンなどのホルモンを分泌している。
膵のう胞は膵臓の内部や周囲に液体が溜まり袋状になったもので、大きく腫瘍性と非腫瘍性に分けられる。膵のう胞の約30%は非腫瘍性の仮性のう胞だ。腫瘍性には膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や粘液性のう胞腫瘍(MCN)、漿液性のう胞腫瘍(SCN)などがある。
この4種類で約80%を占める。腫瘍性の一部は悪性化する可能性もあり、的確な診断が欠かせない。
東京医科大学病院消化器内科の糸井隆夫准教授に話を聞いた。
「診断は超音波内視鏡やCT、MRIなど画像検査で行ないます。仮性のう胞は風船のような丸い形をしています。IPMNはブドウの房状、MCNも丸形ですが中は複数の小さな部屋に分かれています。
SCNは、固まり状やブドウの房状など様々の形があります。見た目が似ていて判断しにくい症例もあるので、専門病院の診断で治療方針を決める必要があります」
仮性のう胞は、急性膵炎や慢性膵炎の炎症に伴い、膵臓の一部に膵液が溜まり膨れたもので、小さいものは無症状で、時間が経過すると自然と消えるものが多い。しかし大きくなると、上腹部や背中に息苦しさや痛みを感じることもある。
腫瘍性のIPMNは、膵臓で作られた膵液を十二指腸に流す膵管の粘膜に粘液を作る細胞ができ、この粘液が膵内に溜まりブドウの房状の袋ができる。MCNは膵尾部に粘液を作る細胞ができて、のう胞となるものだが、発症頻度はIPMNの方が高い。SCNは粘液性に比べて悪性化しにくいといわれている。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年6月22日号