アルツハイマー型認知症は認知症の約50%を占め、患者は約200万人と推計されている。65歳以上で発症する晩発型が多く、高齢化に伴い増える傾向にある。この病気は脳の神経細胞が徐々に減少し、記憶を司る海馬がとくに萎縮し、記憶障害や知能低下、重症になると人格障害などが起こる。
診断は“長谷川式簡易知能評価スケール”などで認知機能障害の程度を計り、日常生活の問診や画像診断などで総合的に判断する。先にCT検査で慢性硬膜下血症や脳腫瘍など認知症の症状を起こす他の病気と区別して、その後MRIで海馬などの萎縮の程度、脳の血流検査で脳機能の低下を見る。
埼玉医科大学客員教授で、国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンターの松田博史センター長に話を聞いた。
「従来はMRI画像を医師が手作業で左右の海馬の画像の数十枚をトレースし、萎縮の程度を計測していました。頭の大きさも人それぞれなので、診断は1件につき2時間以上かかっていました。2000年にロンドン大学のアッシュバーナー博士が脳の画像を3つに分けて、標準のモデル脳に形を変えることにより統計学的に評価する解析法を発表しました。それを参考に作ったのが画像診断支援システムです」
現在認知症は対症療法でしか治療できないが、早期発見できれば服薬により進行を遅らせることが可能だ。さらに認知症の免疫療法などの根本治療薬開発での評価にも利用可能と期待されている。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年6月29日号