竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「いたずらで鴨を射殺、犯人にはどの程度の刑罰が下されるのか?」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
公園の池の鴨に矢が当たって死んでいるのを見つけました。何者かがいたずらで矢を射って殺したのだと思います。このような事件の場合、犯人はどういう罪に問われるものでしょうか。鴨は公園で飼っているものかどうかは分かりませんが、ひどいことをした犯人の罪は、どのように考えるべきですか。
【回答】
鴨が公園管理者によって逃げ出さないように、池の中の檻などで飼育されていた場合には、犯人は動物愛護法によって処罰されます。
動物愛護法第44条の4項で、「牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」等の特定の動物の他、「人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」を「愛護動物」と定義し、1項で「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」と定めています。
管理者が飼育管理している鴨を弓矢で射殺すれば、人が管理している鳥類である愛護動物をみだりに殺したことになり、明らかに動物愛護法違反で罰せられることになります。
しかし、自由に飛来していた鴨であれば、「人が占有している」とはいえず、愛護動物には当たらないので、同法では処分できません。この場合、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)が適用されるかどうかが問題となってきます。
この法律は、狩猟の安全と鳥獣や自然生態系の保護等を両立させようという法律で、鳥獣を捕獲したり殺傷することを狩猟と定義して、規制を加えています。同法は、肉・毛皮の利用目的などで、狩猟の対象となり得る鳥獣を「狩猟鳥獣」としていますが、もちろん鴨もその一つです。同法は、鳥獣保護区、休猟区等を定めて、一定の場所における捕獲の禁止などの一般的な規制を行なうほかに、期間や狩猟法でも規制しています。
本件では公園ということですから、元々狩猟が規制されているはずです。鳥獣保護法違反になるのは間違いないでしょう。こうした規制に違反した狩猟をすると、鳥獣保護法により一年以下の懲役、又は百万円以下の罰金で処罰することになっています。
※週刊ポスト2012年7月20・27日号