夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、ご主人(54歳)がソフトウェア会社勤務の奥様(55歳)。自宅でのご主人のファッションはランニングシャツにパンツ姿でした。
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宅配便が届いても、その格好で受け取るので、「みっともないからこれを着て」と、紺の作務衣を買ってきました。主人は「坊さんっぽいなあ」と、あまり気乗りしませんでしたが、テレビの受信料徴収に来た人が、作務衣姿の主人を見て、「画家か陶芸家の方ですか?」と質問。その時は「全然違いますよ」と否定した主人でしたが、その夜、本棚の美術百科を取り出し、熱心に眺めていました。
翌日曜日。クリーニング屋さんがワイシャツを届けに来ると、「白いワイシャツといえば、僕はユトリロの白の時代が好きなんですよ」と話しかけ、クリーニング屋さんはキョトン。主人は「芸術を理解できる人が来ないかなあ」と玄関先に座りこみ、待ち構えます。
すると今度は、新聞の集金のおじさんが来ました。新聞代を払いながら「スザンヌは好きですか?」と質問する主人。「ああ、知っていますよ。熊本出身のタレントでしょ?」「違う! フランス人だよ」怒りだす主人。アナタ! それはアナタの間違い。スザンヌではなく、セザンヌよ!
※週刊ポスト2012年8月3日号