Hな写真を投稿する雑誌は脈々として存在するが、最近はSNSなどの普及により、気軽にネットでもH写真を投稿できるようになった。そんな時代到来だが、人気作家、イラストレーターのリリー・フランキー氏もかつて各種投稿雑誌で、投稿批評のコラムを続けていた。投稿写真の楽しみ方について説く。
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10代の終わりから20代にかけて、素人投稿雑誌を貪るように読んでいた僕は、いつしか『ニャン2倶楽部Z』をはじめ投稿雑誌のほとんどで連載を持つようになっていました。
投稿雑誌の魅力というのは、登場人物たちが、凡人には真似できないぐらい人生を楽しんでいることに尽きます。投稿者は、屋外で露出するためだけに旅行に行き、写真を撮る。そこに照れや恥じらいはいっさいない。愛する彼女を中央線の駅のホームに立たせて素っ裸でピースサインをさせるような男は、険しい山を果敢に登っていくアルピニスト同様、尊敬に値するし、感動を覚えます。
しかし、投稿されている写真にエロスを感じるかというと感じない。これを眺めながらオナニーすることは絶対にないし、まずチ○ポが勃たない。投稿雑誌を広げたところで、出るのはため息ぐらい。あけっぴろげな投稿者の人生に対して、なんと自分の人生はちっぽけなのか。そうやって自分の人生を省みるのが投稿雑誌の正しい楽しみ方だと思います。
エロ本やエロDVDがエンターテインメント作品なら、投稿雑誌は純文学作品に位置づけられる。全編にわたって、『苦役列車』のような世界が広がっているんですから。
『ニャン2倶楽部』(ニャンニャンクラブ)では読者が送ってきた文章に編集者が手を加えて原稿にしていくわけだけど、「ニャン2文体」とでもいうような独特の文章表現があった。「殺さない限りは何をしてもいい女です」で始まり、「ホテルで即マンに泣きました」で結ぶような文体。言葉のはしょり方が天才的に上手く、抜群に面白かった。僕も渡辺満里奈なんかのグラビア写真に、勝手にニャン2文体の文章をのっけて友達の家にFAXで送りつけていました。
※週刊ポスト2012年8月10日号