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テリー伊藤 デート中にG馬場と遭遇して気まずい思いした過去

 全日本プロレス創始者・ジャイアント馬場が遺した偉大な足跡は、プロレス界だけにとどまらない。「馬場さんは日本人の価値観を変えた」というのは、生前の馬場さんと親交のあった演出家のテリー伊藤氏だ。馬場さんとの思い出をテリー伊藤氏が語った。

 * * *
 僕は、馬場さんの功績のひとつに、老いていくことの魅力というものを初めて日本人に分からせたことがあると思っています。日本人の価値観を変えた人ではないかと。

 老いてもなお、そのときの自分にできる最大のことをファンに見せる。他のスポーツ選手では、体力的な限界が来ると潔く引退することが美学になっている部分が多いのですが、馬場さんは、肉体的にはピークを越えた状態でも、つねに一生懸命、全力投球のプロレスを観客に見せることで、全盛期とは別の感動をファンに与えていたと思うんです。

 チビッ子からお年寄りまで、馬場さんのファンは実に幅広かった。みんな、馬場さんがリング上にいてくれるだけで、その姿を見るだけで満足するんです。もう、日本人にとっての富士山のような存在なんですよ(笑)。

 そんな人は、馬場さんの前にも後にもいないでしょう。かけがえのない方でした。テレビやCMに引っ張りだこになったのは当然といえます。

 そういえば昔、こんなこともありましたね。馬場さんは、赤坂の旧キャピタル東急ホテルが大のお気に入りで、打ち合わせや取材には、きまってそこで応じていました。いつも『折鶴』というレストランを使っていて、馬場さんのための定位置があったくらいです。

 そして、僕がたまたま偶然、当時のガールフレンドとそのレストランに食事に行ったとき、馬場さんがいたんですよ。馬場さんも僕たちに気付いて、僕と目が合ったときに、口に人差し指を当てて、「黙っといてあげるよ」というサインを送ってくれました。あのときは、気まずかったなぁ(笑)。

 そんな“事件”があった後、馬場さんと仕事やプライベートで会ったりすると、「今度は僕にもご馳走してよ」なんて言ったりしてくれました。御茶目なところがあるんです。それも、馬場さんの大きな魅力のひとつでした。

※DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』第4巻より

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