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寺山修司とケンカの網走五郎 泳いで北方領土失敗も尖閣成功

 領土を守る行為とは、「ここは日本領だ」と叫ぶことだけではない。むしろ、名もなき人による生活の営みこそ、「日本領土」たる揺るぎなき根拠である。ここでは北方領土をめぐる意外なエピソードを紹介しよう。

 北海道から北方領土へ泳いで渡る――そんな無謀な挑戦をした日本人がいた。

 寺山修司の劇団「天井桟敷」に所属する劇団員だった網走五郎(当時32歳)は1976年、ひょんなことからこの計画を思いつく。

 網走は当時、寺山と些細な行き違いからケンカ別れに近い形で劇団を飛び出し、日本全国を放浪していた。北方領土へ泳いで渡ることを思いついたのは、根室の納沙布岬からオホーツクの海を眺めていたときだった。「俺と似ている」と思ったという。

 劇団を飛び出しひとり旅を続ける自分と、日本の領土でありながらはじき出されている北方領土と、どこか境遇が似ている、と感じたのだ。だからこそ弾かれ者が命を懸けて、同じ弾かれ者である北方領土を返せとソ連(当時)に訴える作戦を決行しようと考えた。

 それから9か月間、遠泳の訓練にあけくれた彼は、1977年7月27日の早朝、ひっそりと海に入り沖に向かって泳ぎだした。目指すは7キロ先の歯舞群島・水晶島である。

 小雨が降り出し、冷たい海水で冷え切った身体を休ませるため、途中の島に座礁していた廃船によじ登ったところを、突然ソ連国境警備艇に連行された。網走は、水晶島から色丹島、国後島と北方領土の監獄をたらい回しにされ、サハリン移送の後、同年12月に釈放された。

 彼はその後、尖閣諸島へ手漕ぎボートで上陸することに成功し、見事リベンジを果たしている。

※週刊ポスト2012年9月7日号

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