さる8月7日、国家公務員の退職金を平均402万円減額することが閣議決定された。が、「これでようやく高給取りの官僚たちが、格差を認めたか」と、溜飲を下げるのはまだ早い。
今回の決定では、引き下げの時期が来年1月以降、“段階的に”となっている。これは極めて異例のこと。ここには“あるカラクリ”があるのだ。
通常、公務員給与は、毎年の人事院の調査によって、「人事院勧告」が出され、民間格差との是正が行なわれる。これは、例年夏頃となることが多い。そして、この夏の勧告を受けて秋の臨時国会で法案が可決し、その年の4月に遡って引き下げ、もしくは引き上げが実施されるのである。
しかし、前述した通り、今回の実施は来年1月から、しかも段階を踏んで、2年後に引き下げ終了となる。これでは、最終的な引き下げとなるまでに、“駆け込み退職”をする官僚が続々出てくることも予想される。
さらにおかしいのが、“来年1月”という時期だ。そもそも、公務員の退職金が民間より高いということは、昨年中にはわかっていたこと。であるならば、昨年度中に引き下げを決め、今年度4月からの実施となるのが筋だろう。にもかかわらず、「有識者会議」なるものを立ちあげ、結論を今年8月まで先延ばしにした。
理由は、勝栄二郎・前財務省事務次官その人にある。
政治評論家の屋山太郎氏が話す。
「今回の退職金引き下げについては、霞が関では、“勝逃げ”といわれている。勝さんは、定年を過ぎているが、定年延長で事務次官に留任していた。これはほかでもない消費増税のため。これが8月に成立したことで、年内には退職するという目処がついた。来年1月以降の引き下げにすれば、勝さんは満額退職金がもらえるということになる。まさに官僚たちの狙いはここにあったといわれている」
消費増税を成立させた“功労者”に、「退職金を下げさせてください」とは、どの省庁の官僚もいえなかったということか。
担当の総務省に時期の決定理由について尋ねると、「できるだけ早くしようということで決まったものです」 と、国民を小バカにした官僚答弁が返ってきた。
8月17日に財務省を退職した勝氏に支給される退職金は約7500万円だから、減額されていれば約6375万円。国民に増税を強いた功績で自分だけは丸儲けである。
※週刊ポスト2012年9月14日号