ライフ

瓦の落下で隣家の窓破損 気付かずに発生でも責任は免れない

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「予期せぬ強風で隣家の窓が破損。よりよい対応を教えてください」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 強風の影響で屋根の瓦がズリ動き、結果的に裏の家に落ちてしまい、その家の窓を壊しました。しばらく事故に気付かずにいましたが、裏の家の抗議で知らされました。このような場合の損害賠償は、個人的な過失によるものではありませんが、被害者に対し、どのように対応するのがいいでしょう。

【回答】
 過失でないと言い切れるでしょうか。また、過失がないとしても、責任を負わなくてはならない場合もあります。すぐに賠償を申し出て、専門業者に屋根を修繕してもらうことです。

 強風で瓦が落ちたということは、よほど瓦の押さえが甘かったのではないでしょうか。瓦は落ちると危ないものです。外観から、瓦が敷かれた状態が異常であることが分かったのではないかと思います。その場合は事故も予見できるので、過失があったといえるかもしれません。また素人が下から瓦を見ても分かることではないため、過失がないとしても責任は免れないでしょう。

 民法第717条では、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」と、規定しています。建物は土地の工作物ですから、建物に瑕疵がある場合、この規定による土地工作物責任を負います。

 瑕疵とは、通常備えておくべき安全性が欠けていることをいい、瑕疵の結果、他人に損害を与えると賠償義務が発生します。その責任はまず占有者が負いますが、必要な注意を払っていたことを証明できれば免責され、その場合は所有者が責任を負います。所有者の責任は無過失責任で、瑕疵があり、その瑕疵と損害の因果関係があれば、免責を受けることはありません。

 そこで、風で瓦が落ちたことが通常、備えておくべき安全性を欠いた結果といえるかですが、ご質問からは、経験がないような強風が吹いたということではないと思います。日常あり得る強風であれば、瓦の敷設状態は当然これに耐えるものでなければなりません。そのため瓦が落ちたのであれば、瑕疵は否定できないでしょう。

※週刊ポスト2012年9月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン