ファミリーマートが“食べられる”コンビニに変貌しつつある。2013年度から新店舗の半分以上に「イートイン」と呼ばれる飲食コーナーを設けるというのだ。同店のイートイン導入店は現状で約400店(全店舗数8982、2012年7月時点)。それを2012年度は約50店、2013年度は新店舗を含む400~500店に設け、倍増させる予定だという。
コンビニのイートイン設備状況をみると、ミニストップは約2100店全店にイートインを設置している。一方、業界売上1位、2位のセブンイレブンとローソンは、一部、イートインを設けている店舗はあるものの、現状では総店舗数の1割未満にとどまる。業界3位のファミリーマートが新たな戦略へと舵を切ったというわけだ。なぜファミリーマートはイートイン導入に動くのか。経済評論家の平野和之氏はこう語る。
「コンビニ業界は、市場規模が10兆円を超える勢いになっており、前年度比9.8%の伸びを記録するなど好調でした。これはコンビニの定義の改変に成功してきたからです。いまコンビニは、食品の売り上げだけでなく、宅配など、サービスの伸びが目立ちます。また、各社ともPB(プライベート・ブランド)商品を展開して、収益力、集客力を上げてもいます。さらなる業態展開の一つとして、イートインがあるのです。今後、ドライブスルーなども始まると予想されます」
続けてもう一点、ファミリーマートの売り上げ事情を指摘する。「1店舗当たりの売り上げを比較すると、セブンイレブンに比べてファミリーマートは、2割ほど少ない。イートインはファミリーマートの収益力向上のための戦略なわけです」
では、ファミリーマートはイートインでどのような客層を狙うのか。先行するミニストップとは異なる、と平野氏は語る。
「主に女性の個食でしょう。ファミリーマートはスイーツコンビニの元祖ともいえますし、『彩りファミマデリ』など、惣菜などの中食にも力を入れている。一人暮らしの女性が気軽にランチや夕食をすませたり、ちょっと休憩でお茶をする、といった需要を見込んでいると考えられます。女性はそもそも、一人で飲食店に入りづらいですから。席は、窓際にカウンターテーブルを設けると発表されていますから、女子高生が集まってアイスクリームを舐めている印象のミニストップではなく、窓の外を眺めながら女性が並ぶ、スターバックスのような顧客層が狙いでしょう」
無線LANや、入れたてコーヒーを提供する機器の導入も予定されているという。とはいえ、女性一人でコンビニで食事、というのは抵抗があるような気もするのだが。平野氏にぶつけてみた。
「スタイルとして、完全に定着したとはいえないですね。ファッションとして定着させられるかがキーポイントですから、重要なのは店舗レイアウトです。女性はプレミアム感をいま求めています。街の便利スポットであるコンビニが、ブランドイメージを引き上げられるかが、イートイン戦略成功の鍵になるでしょう。イートインで、売り上げが3割上がれば、大成功と言えるでしょう」
女子高生のミニストップに対し、落ち着いた趣を醸し出す“おひとりさまのファミリーマート”となれるかは、見られてOKなプレミアムな店舗作りにかかっているようだ。