【著者に訊け】
『銀の匙』1~4巻 (荒川弘・著/小学館/各440円)
『飼い喰い』 (内澤旬子・著/岩波書店/1995円)
日々口にしている肉や食品のことを、我々はどれくらい知っているだろうか。自ら3匹の子豚を飼い育て、肉にして食べたイラストルポライターと、北海道で酪農を営む家庭で育った人気漫画家。具体的経験をした2人だからこそ語り合えた「食べる」ことについて。
* * *
内澤:それにしても牛乳が飲みたくなる漫画ですね。
荒川:あはは。牛乳は断然搾りたてに限りますよ~。
内澤:あとはアスパラとかもぎたてのトウキビとか。荒川さんの母校もエゾノーみたいな高校なんですか?
荒川:校名、敷地面積はウソついてますけど、ほぼ母校がモデルです。やたら敷地が広くて自由度が高いのは同じ。農業機械の科目では溶接も習いましたし、今は最先端のバイオ技術なんかも学べるみたいです。
内澤:家畜の世話も生徒がしてますよね。実は家畜は教師が飼い、生徒に触らせない農校もあるんです。PTAがうるさいとかで。
荒川:……(絶句)。
内澤:大学も畜産というと今は人気がないからアニマルサイエンス科とか。実験した後の肉も、学生は気味悪がって食べないらしい。その点、八軒クンはいいですね。豚丼のベーコンを自分は食べられるのかって、一々悩みまくるのがイイ。
荒川:でも食べれば美味しいんですよ、結局。そこが一番肝心な点で、内澤さんも3匹の子豚を最後は最高に美味しく食べてますね。
内澤:あの時は知人の料理人がフレンチ・コリア・タイの3種類に料理してくれて、友人にふるまったんですが、私がありつけたのはほんの一口ずつ(笑い)。でも最高に美味しい“豚肉”でした。
荒川:その美味しいことを忘れて可哀想とか残酷とか言うから話がおかしくなる。
内澤:私もよく「飼い喰いなんてグロすぎる」と言われますが、食べといてそれはないよと。倫理がどうとか、大層な話ではなくて。
荒川:要は食べたいってことですよね。私も肉という肉は全部食べてみたいもの。あー、レバ刺し食べたい~。
内澤:私も~(笑い)。
※週刊ポスト2012年10月12日号