みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、散骨の海洋葬とその値段について考える。
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海が好きな御主人とともに2年前にこの地に引っ越してきたというAさん。60代で亡くなった御主人が大好きだった海。二人で散歩をした海岸から、いつも眺めていた海に遺骨を撒こうという決断に、迷いはなかった。お墓も立てない。必要と思ったこともない。
一連のセレモニーは意外に淡々と事が運ぶ。スタッフに手渡された紙に包まれた遺灰を手に取った女性は、万感の思いをたたえた表情で、海に投げいれた。その間も流れ続ける『ゴッドファーザー 愛のテーマ』。遺灰は一瞬のうちに波間に沈んでいく。
今度は、その方向に向かって花びらを撒き、故人が好きだった日本酒も海に注いだ。この間、時間にすればわずか数分。あまりにも凝縮された葬送である。
さて、この合同散骨の料金がいくらかというと、ひとつの遺灰につき2人までが乗船できて、遺骨の粉末化、献花、献酒(酒、ビール、ワインなど)、BGM、写真撮影、散骨証明書を含めて、10万5000円。
また船を一艇チャーターしての散骨ももちろん可能で、5名が乗船する一番安いコースだと、合同散骨同様に遺骨の粉末化や献花など含めて15万7500円。
もちろんそれ以上の人数にも対応した料金があるし、散骨場所も可能な限りリクエストに応じる。最近では網走で散骨したケースもある。
※週刊ポスト2012年11月23日号