「テレビばかりを見ているとバカになる…」──そんなことが言われていた時代もあったが、実際にはどうなのだろうか。『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が、解説する。
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テレビの内容(コンテンツ)に関する研究は多く存在しており、よく知られているのが暴力的コンテンツと実際の暴力・攻撃性との関係性です。ここには確かに相関性があって、脳レベルでは、暴力的コンテンツを含むテレビ番組をよく見る少年ほど、社会性や自己制御などにかかわる「前頭眼窩皮質」という脳領域の密度が小さいことがわかっています。つまり、そうしたテレビ番組は、脳の構造すら変えてしまい、社会的問題行動に結びつく可能性があるということです。
脳には、「見る対象によって脳機能・構造が無意識のうちに影響を受ける」という原理があります。例えば、どのような恋愛ドラマを好んで見るかが、実際の恋愛のタイプと多少なりとも相関するという(私からすると)ドーデモイイような研究もありますが、これも「見る対象によって脳が無意識にも影響を受ける」という原理からすれば当然です。
さらに、知的ではないコンテンツを多く見ると、知的機能を低下させるという研究データもあります。こうしてみると、テレビ視聴は(座位時間との区別は必要ですが)社会的問題行動に結びついたり、知的能力を下げたりと、総じて悪影響が心配されます。
しかし一方で、「見る対象によって脳は無意識にも影響を受ける」という原理がある以上、「テレビ番組・コンテンツによっては、好影響があるものもある」はずです。実際、日本の幼児に関する調査では、「バラエティー番組」を見る頻度が高いほど、知的能力が高いというデータもあります。
知的ではないテレビ番組が脳に悪影響を及ぼすなら、論理的には逆に知的なテレビ番組は好影響を及ぼすともいえます。さらに、「楽しさ」「おもしろさ」は学習能力を高めますから、「知的なバラエティー番組」はかなりの好影響を及ぼすはずです。
※女性セブン2012年11月29日・12月6日号