親知らずの抜歯やインプラント治療の際、誤って下歯槽神経や舌神経を傷付けマヒや痛みがでることがある。神経の表面が少し露出した程度なら自然回復するが、切断では半年以内に縫合手術をしないと治らない。
現在、知覚神経活動電位検査により、切断したかどうか客観的に診断できるようになっている。従来の触覚や痛覚を検査する方法に比べ、的確な診断が可能になった。
下顎の中には下歯槽神経が通っており、神経線維の先端には触覚や痛覚、温度を感じる受容器もある。誤って神経を切断や損傷すると、マヒや痛みなどの症状が起こる。
東京歯科大学千葉病院の急性期神経機能修復外来がマヒの原因を調査したところ、44%が親知らずの抜歯、インプラント治療によるものが12%、インプラント治療などによる骨髄炎が16%となっている。近年インプラント治療の普及により、下歯槽神経損傷のトラブルが増えている。
東京歯科大学臨床准教授で佐々木歯科・口腔顎顔面ケアクリニック(千葉県館山市)の佐々木研一院長に聞いた。
「神経損傷には3段階あります。神経の表面の一部(髄鞘)が変性したニューラプラキシアは、手術しなくても神経が再生します。しかし、神経内の軸索が断裂したアクソノトメシスや神経が部分、あるいは完全断裂したニューロトメシスは、縫合などの手術を行なわないと治りません。手術は損傷後半年がメドで、できるだけ早く適切な検査をすることが治療のポイントです」
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年12月07日号