ライフ

ファミマのチーズナゲットで異臭騒動「匂いは無秩序」が教訓

 “環境問題”は、気付いた時には大事になっている場合が多い。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が「匂い環境」について指摘する。

 * * *
「ファミリーマートから異臭がする」という奇妙な話が、ツイッターやネットで一気に広がりました。「雑巾のような匂い」「乳製品の強い匂い」「銀杏のような匂い」「くさくて耐えられない」などなど書き込みが。

 奇妙な匂いの原因と推測されたのは……新商品「チーズナゲット」。『鶏の胸肉・もも肉・皮を使用したジューシーなナゲットに、濃厚な風味のチェダーチーズを混ぜ込んだもの』(公式サイト)。それを店内で「調理」する際、発生する個性的な「匂い」が異臭騒動につながったらしいのです。その一方、「味はおいしい」と絶賛されている。

「チェダーチーズ」の香りが「揚げる」ことで増幅し拡散?  それにしても、苦情の嵐になるほどの匂いって、どんなものなの? 近所のファミマに買いに行くと…あれ?  「匂い」どころか、「チーズナゲット」の姿もない。

「今、売り切れでして……」と店員さん。

「明日は買えますか」

 店員さんは「いや…」と口ごもり、「でも販売終了にはなっていないので」と言いつつも、いつ入るかはわからない、と。

 別の店では、「販売があまりに好評で、一時的に販売停止中」という趣旨の張り紙が。「12月中旬に販売再開」「楽しみにお待ちください」と思わせぶりな予告も見かけました。

 再登場するとすれば、その時、「匂い」はどうなっているんだろう? 薄まっている? マイルド化するために今必死で商品改善を行っているのかな? などとあれこれ想像してしまいます。

 人間の嗅覚は不思議です。嗅覚はそもそも、危険をいち早く察知するセンサー。未知の匂いに対して、まず身構える。未知=危険だからです。その正体が判明し、匂いが「馴染み」になれば、許容していく。さらに関係が深くなれば、強い愛着を抱く場合も。

 とにもかくにも、今回の異臭騒ぎではっきりしたこと。それは、「匂い」がこの社会の中で強烈なアピール力を持っているということです。そして、気付けばあまりにもいろいろな「匂い」が、日常の中に充満してしまっているということ。

 きっといるはず。デパ地下の食品の匂いが、上階のファシッョン売り場まで漂ってきて、顔をしかめた人。香り付き洗剤・柔軟剤が大ヒットしていますが、冬の締め切った満員電車内で、いろいろな香りが混濁し、たまらんと思っている人。食事の時間帯というのに、トイレの匂いを「くさーい」と何度も連呼するCMに、思わずチャンネルをかえた人。  

 チーズナゲットの教訓。それは、この社会がいわば「匂い無秩序状態」にある、ということ。もう少し冷静になって、みんなが許容できる「匂い環境」とはどうあるべきなのか。考える時が来ているのかもしれません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
《盗まれた約1000万円の“純金茶碗”は見つかったが…》オモテの世界では売買できない盗難品を扱う「盗品マーケット」の実態
《盗まれた約1000万円の“純金茶碗”は見つかったが…》オモテの世界では売買できない盗難品を扱う「盗品マーケット」の実態
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン