ライフ

回転ずしのエンガワ、ウニ、エビはなぜ安い? その工夫紹介

 鮨は食いたい。しかし高級なものはそうそう頻繁に食べられるものではない。そんな庶民の味方が「回転ずし」である。近年の回転ずし人気には凄まじいものがある。外食産業全体が落ち込む中、常に成長を続けるこの業界の市場規模はここ10年で約2倍になっている。

 そんな回転ずしが安さを可能にしているのには、様々な秘密がある。まず水産会社が回転ずし店を経営しているケース。新鮮な魚介を中間業者なしで入手できるため安く提供できる。大手チェーンであれば大量一括購入により原価を抑え、徹底的に効率化することで価格を下げることが可能だ。

 そしてもうひとつ、海外から入手するという方法もある。例えば人気のウニ。回転ずし店の多くは、アメリカ産のウニを使用している。このウニの大きさは国産の約10倍。それだけたっぷり身が取れれば、一皿の値段も下げられようというもの。ほかにもイカなどで、安くて大きな海外産のものが使われているケースがある。これらは、いかに安く客に提供できるかを考えた結果の企業努力と言えるだろう。
 
 一方、安価で手に入りやすい“似た魚”を使う、いわゆる“代用ネタ”というものがある。本来クルマエビを使っていた「エビ」に、養殖もののウシエビ、いわゆるブラックタイガーを使用するのもそのひとつ。

 また、希少な部位であるはずの「エンガワ」が回転ずしなどで廉価で食べられるのは、それが高級魚であるヒラメのエンガワではなく、カラスガレイという別の魚のエンガワだから。ヒラメとカレイなので似ているのは当然だが、カラスガレイはヒラメの倍ほどの大きさがあり、エンガワで比べれば7倍もの量が取れる。

 ほとんどが輸入もので、しかももともと破棄されていた部位なので値段も安い。歯ごたえや脂など、ヒラメとは似て非なるものだが、エンガワを庶民にも身近にした功績は大きい。

 かつて一部の回転ずし屋では、アフリカ原産の淡水魚であるナイルパーチを「スズキ」、ティラピアを「タイ」などと偽装して売る悪弊がまかり通っていた。ただし2007年に水産庁がこうした名称使用に関するガイドラインを制定するなどの動きもあり、現在はそのような偽装ずしを提供する店は減っている。安心して回転ずしに足を運んでほしい。

取材・文■大木信景(HEW)

※週刊ポスト2012年12月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン