国内

大前研一氏 社内トレード制度の実現には使える人事DBが必要

 いま大手企業はグローバル人材の育成に力を入れている。だが大半の日本企業は社内に世界で活躍できる人材がいないため、海外子会社を含めた社内トレード人事を慌てて活発化しようとしている。自らの会社で社内トレード制度を成功させてきた大前研一氏が、人事データベース(DB)の必要性を説く。

 * * *
 私はある企業で10年以上前に、社員が自分のやりたい仕事の分野を表明し、部長などの管理職も欲しい人材の条件を公表して、それが一致したら異動が成立する――という社内トレード制度を提案して、うまく機能している。

 私はコンサルティングをしていて顧客企業に人事システムの改革が必要だと判断した場合は、まず人事部に社員の人事DBを見せてもらう。すると、ほとんどの会社は、人名リストや出身校リストなど、おざなりな書類しか持っていない。

 入社時の応募書類のほかには「入社してからどの部署に何年いたか」という簡単な社歴が書いてあるぐらいで、その時の業績はどうだったのか、特殊な才能を発揮したのか、上司や同僚との関係に問題はなかったのか、といった情報はほとんど書き込まれていないのである。だが、それでは社内トレード人事など、できるわけがない。

 人事DBに必要なのは、ソフトの情報だ。それは○×ではなく、「こういう逆境にもめげず期限までにこんなプロジェクトをまとめ上げた」「上司の反対を押し切りコツコツと努力して売り上げを伸ばした」「同僚や部下とこんな軋轢があった」「性格はきついが仕事はやりきる」といった具体的な叙述を伴った評価である。それが書いてなければ、その人の能力を第三者が適正に判断することはできない。

 よく人事関連の記事で「360度評価」や「ピア・エバリュエーション(相互評価)」などと称する評価方法が紹介されているが、その多くは「いいこと」しか書いてない。それではダメだ。欠点も指摘されていないと正しい任命、評価ができず、優秀な人材を発掘することができないからである。

 そもそも、上司に課せられている最も大きな責任は、自分の後継者を見つけて指名することだ。「A君に2つのプロジェクトを同時進行で任せたが、週1回の打ち合わせだけで、私が期待した以上の成果を残した。彼以外に私の後継者はいない」といった具体的な評価の蓄積こそが重要なのである。逆にいえば、そういう判断ができない人事DBは、「使えない」のである。

 要するに、きちんとした人事DBを作るのは、社内で埋もれている優秀な人材を発見して引き上げたり、適材適所の配置をしたりするためなのだ。

※週刊ポスト2012年12月21・28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン