高木道郎氏は1953年生まれ。フリーライターとして釣り雑誌や単行本などの出版に携わり、北海道から沖縄、海外まで釣行している。その高木氏が、釣りに最適な堤防について解説する。
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大昔、人々は自然の恵み豊かな海辺に住み、魚介や海藻を採取しながら集団生活を営んだ。岬にマンションが建ったり、巨大な防潮堤に囲まれて街が作られることはなく、豊かだけれど過酷な自然と正対するため、生活可能な範囲は地形によって制限されていた。
多くは真水が流れ込む入り江の奥まったあたり、干潟や藻場が広がる内海、風浪を遮る岬の陰、天然の離岸堤となる小島や岩礁がすぐ沖にある場所、島の陸向きにある浦浜、大きな河口周辺に住居を構えたはずである。
いずれも防波機能を備えた地形だが、人口が増えると大きな石を積み上げた石積堤(捨石堤)で地形を補強した。不安定な砂上は避け、堤防は主に内海の岩礁や干潟に造られた。海の近代化の象徴とも言うべき混成堤は産業革命期に開発され、捨石堤上にコンクリート製直立堤を置く構造だった。
現在は戦後に登場した、コンクリートと鋼を用いたケーソンと呼ばれる箱形構造物が主流である。波が通過する穴やスリットを設けた消波ケーソン、傾斜をつけて波力を抑えた上部斜面ケーソン、反射波を抑える半円形ケーソンなど、様々なケーソン堤が試され、魚介や海藻の棲息に適した環境に優しい構造も模索されている。
堤防は形で傾斜堤、直立堤、混成堤に大別され、堤体(堤防本体)の素材や構造によって捨石式、コンクリートブロック式、ケーソン式に分けられる。
一般的なのは基礎捨石を台形状に成型した上に波浪に強いケーソンを置き、傾斜堤と直立堤の複合形で安定感のあるケーソン式混成堤だが、釣り場としては足場があまり高くなく、所々崩れ、成型されていない捨石が傾斜を作り、釣りの邪魔にならない程度に消波ブロックが入ったコンクリートブロック式直立堤が魅力的だ。
そんな夢の堤防を見つけたら最低1年は通うべし!
※週刊ポスト2013年1月1・11日号