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東京チカラめし社長「牛丼は寡占状態ゆえ競争の余地あった」

 東京地区で伸長を続ける「東京チカラめし」が関西に出店し、「すき家」「吉野家」「松屋」の3強を脅かす存在となっている。「冬の時代」と呼ばれる外食産業にあって、快進撃を続ける三光マーケティングフーズ(東京チカラめしの運営会社)の平林実社長に迫った。

──『東京チカラめし』の出店攻勢に、業界も世間も驚いた。

平林:スピード感がないと、競争には勝てません。2011年6月に第一号店を出し、1年半で120店舗を超えました。2014年中には500店舗に到達したい。「すき家」「吉野家」「松屋」の御三家が9割のシェアを占める牛丼業界への参入には迷いもあったのでは? 平林 社内からもずいぶん反対されました(笑)。

 居酒屋という商売で地歩を固め、会社も成長したのに、なぜ今さら「牛丼」で勝負するのか、と。でも、私は思うんです。「これでいい」と満足した途端に終わってしまう、と。勝負をやめ、守りに入った時点で、人は知らないうちに坂道を転がり落ちていく。

 平林氏率いる三光マーケティングフーズは、個室居酒屋というスタイルを提案した『東方見聞録』や、一品270円という価格破壊を実現した『金の蔵Jr.』などで一世を風靡した。総店舗数250を超える。“居酒屋の風雲児”が、御三家が席巻する牛丼業界に突如、参入した。それは業界内外に「無謀」と映ったが、この挑戦にこそ平林氏の哲学が凝縮されている。

──御三家の牙城は堅牢です。新規参入は難しいと言われた。

平林:社員にはいつも「常識を疑え」と言っています。確かに御三家は強力で、だから参入を諦めるというのが世間の常識です。しかし、常識に従っていては道は開けません。考えてみてください。「すき家」「??野家」「松屋」が市場をほぼ独占し、30年間も大規模な新規参入がなかったというのは異常です。

 逆の見方をすれば、栄枯盛衰が激しい外食産業の中にあって、長期間、牛丼という武器だけで繁盛し続けたという言い方もできます。つまり「牛丼」は優良素材なんです。灯台もと暗しで、長らく御三家の寡占状態にあった牛丼だからこそ、競争の余地があると思ったんです。

──しかも、肉を煮た牛丼ではなく、「焼き牛丼」で勝負に出た。

平林 :他人と同じことをやっても面白くありませんからね。他人と違うことに挑戦するからこそ、勝負しがいがある。「焼き牛丼」にしたのは、いろいろと試した結果、これがいちばん牛肉の味を引き立たせると思ったから。

 カウンターに、お馴染みの紅ショウガではなく寿司店のようなガリを置いているのも同じ理由です。開発過程ではタレにカルピスを入れてみたり、コーヒーフレーバーを試してみたり……。設備も、味も、店舗運営も、「これで完成」とは思っていません。試行錯誤の真っ最中です。「よし!」と思った時点で成長が止まると思っていますから、走り続けるしかない。

──疲れて立ち止まりたいと思うことはないのか。

平林:もっと楽すればいいじゃないかと思ったこともありますし、怠け心が湧くこともあります。でも、多少の蓄財があって生活が安定したからといって走るのをやめたら、私の心は渇いてしまうと思います。止まったらつまらない。だから挑戦するのです。変化を恐れず前に進む、ということです。

 例えば、外食産業は消費者のニーズ、流行がどんどん変わります。さらに、デフレ不況で「冬の時代」と言われています。だからこそ、「川の流れのように」。移ろいゆく時代に合わせて、会社や自分を変えていかないといけないと考えているのです。ダーウィンの進化論と同じです。マーケットという過酷な自然環境の中で、変化した者のみが生き残るのです。

──変化は大きなリスクを伴う。

平林:人生は「理想」と「現実」の狭間を揺れているようなものです。「理想」にはリスクがつきものですから、ほとんどの人が、安全志向で「現実」を取ってしまう。けれども安全の中に成功はありません。成功するためには、リスクに挑まなければなりません。

※SAPIO2013年2月号

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