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「物忘れすることは大したことないが認知症は病気」と医師

 50代なのに30代にしか見えないドクター・南雲吉則先生が、女性セブン読者の健康に関する相談に回答するこのコーナー。今回は物忘れと認知症について回答する。

【相談】
 最近、母の物忘れが激しくなってきました。もしかして認知症が始まっているのではと心配です。物忘れと認知症の違いや、予防法などについて知りたいです。(さんぽみち・45才・会社員)

【回答】
 高齢化が進んでいる現代の日本では、認知症の問題は切実だよね。ご両親の物忘れが多くなったり、同じことを何度も言うようになったりすると、心配になるでしょう。物忘れと認知症って混同しがちだけど、実は似て非なるものなんだ。

 記憶って、脳の“記憶の引き出し”の中にしまわれているもの。物忘れは、どこの引き出しにしまったか分からなくなっただけ。だからヒントを与えると「あ、それだ!」と思い出すことができる。

 一方の認知症は、引き出しの鍵が壊れてしまって、開かなくなった状態。だから物事を記憶したり、考えたり、判断したりすることができなくなってしまっているんだ。

 例えば、食事の後に何を食べたか思い出せないのが物忘れで、食事をしたことも忘れてしまい「まだご飯を食べていない」と言ったりするのが、認知症だね。では最初に、物忘れについて詳しく話そうか。

 人間の脳の能力って素晴らしくて、一度見たり聞いたりしたことは、すべて記憶してしまうんだ。

 でも、物を考えているときに、今まで経験したすべての情報が頭の中で雑念としてあったら、考えがまとまらなくて大変だよね。嫌なことが頭から離れなかったら、精神的な病気になってしまう可能性も高くなる。

 そこで、今すぐに必要な情報だけを脳の表層にとどめて、すぐには使わなさそうな物や嫌な事柄は、脳の深い部分にしまい込んでしまうんだ。

 だから物忘れすることって、たいして重要じゃないことばかりじゃないかな? 例えば冷蔵庫の前まで来て、何を取りに来たのか思い出せなかったり、タレントの名前や小学校時代の同級生の名前を忘れたって、どうってことはないよね。でも自分の名前や住所など、生きていくうえで大切なことは忘れたりしないよね。

 子供は、あまり多くのことを体験していないから情報量自体が少ないうえに、重要な事柄も少ないため、物事をすぐに覚えて忘れない。

 一方ぼくたち大人は、長い間生きている分、情報量が多い。また、仕事や家庭での責任もあるから、重要事項が多く、大切なこと以外はみんな、脳の深い部分にしまい込んでしまうんだ。だから、大人はよく物忘れするんだね。

 これに対して認知症は病気。こちらは大きく分けて、“脳血管性”と“アルツハイマー型”の2種類がある。

 脳血管性認知症は、たばこや甘い物で血管が傷つき、動脈硬化を起こすことが原因。動脈硬化を起こすと、血管が狭くなって血液の流れが悪くなり、脳の所々が死んでしまうんだ。これを脳梗塞というんだね。

 脳の傷害を受けた部位から徐々に症状が出て、記憶力や理解力や判断力がまだらに侵されていくのが特徴だよ。

 一方、認知症の中でいちばん多いといわれるのが、アルツハイマー型認知症。これは、肉や乳製品の摂りすぎなどにより、アミロイドと呼ばれるたんぱく質が、数十年かけて脳全体にたまることが原因だといわれている。脳血管性認知症と異なり、脳全体が徐々に侵される点が特徴的だね。

※女性セブン2013年1月31日号

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