「バレンタインデー」に中年男はどう対処するべきか。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が様々なシミュレーションから大人的対応をアドバイスする。
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もうすぐあの厄介な日がやって来ます。そう、2月14日はバレンタインデー。「興味ないよ」と無関心をアピールしたり自分に言い聞かせたりしても、平常心で過ごすことはできません。かくなる上は、大人としての美しい立ち向かい方を追究することで、自意識過剰な態度を取ってしまったり、必要以上に打ちのめされたりといった事態を防ぎましょう。
昨今、職場で義理チョコをやり取りする習慣はやや廃れつつあります。そんな中で、あえて義理チョコをくれる女性は、「やっぱりいちおう配っとこうかなあ。でもなあ……」といった迷いや葛藤があったはず。義理チョコ全盛の頃のように「おっ、ありがとう」と、当然のように受け取るだけでは物足りなさを感じさせてしまいます。ハニカミながら「べ、べつに気をつかわなくていいのに」と憎まれ口を叩いて、それが似合う年でもありません。
ここは「うわー、嬉しいなあ。○○さんにバレンタインのチョコレートをもらうのが、子どものころからの夢だったんだ!」ぐらいのことを言ってのけるのが、大人の貫録であり勇気です。露骨な嘘臭さが、中年の愛嬌を醸し出してくれるでしょう。臆面もなく「おっ、本命チョコだね。いやあ、まいったなあ」と喜んで許されるのも、中年の特権です。
娘がいるなら覚えておきたいのが、「ファミチョコ」という言葉。ファミリーマートで買うチョコレートのことではなく、女性がファミリー、つまり父親や兄弟、息子に贈るチョコレートのことです。震災後に家族の絆の大切さが見直されて、去年のバレンタインでブームになったとか。娘がチョコレートをくれたら、サラッと「おっ、ファミチョコだね」と呟くと、ちょっと見直してくれるに違いありません。さらに「娘にチョコレートをもらえるなんて、俺はなんて幸せものなんだろう」「父親にチョコをくれるなんて、いい娘に育ってくれて嬉しいよ」などと大げさに喜べば、家族の絆はさらに深まるでしょう。
ま、ここまで綿密に心の準備をしていても、見事な肩すかしを食らうかもしれません。出勤してからずっと、今日がバレンタインデーであることを忘れたフリをして、その話題を出さないように注意しながら一日を過ごすのも、けっこうつらいもの。午後になっても義理チョコをもらえる気配がなかったら、先手必勝です。会社の近くで、それなりにちゃんとしたチョコかチョコレートケーキを買ってきて、「いつもお世話になっているから、俺からみんなに義理チョコだよ」と言って男女を問わずみんなに食べてもらいましょう。
娘に対しても、期待してもらえなかったときのショックを軽減するために、バレンタインの夜はチョコのお土産を持って帰るといいかも。かぶったらかぶったで、とくに問題はありません。「最近は、女性から男性とは限らないんだぞ」と言えば、どっかで聞きかじった情報を元に、家族に気をつかったんだなということは伝わります。いずれの場合も、ケナゲな姿が女性たちの胸を打って、来年への根回しにはなるでしょう。