この2013年3月期決算で、3メガバンクグループは従来予想を大きく上回る好業績を叩き出す見通しだ。特に三井住友は過去最高益をうかがう勢いとされる。マーケットもそれを織り込み、3メガの株価は軒並み上昇している。
しかし、それはあくまで銀行が保有する企業の株価が上がって含み損が縮小したからにすぎない。メガバンクは1990年代の金融危機を乗り越え、業績的にも財務内容的にも健全さを取り戻したが、他の多くの日本企業がそうであるように、「生き残るためのビジネスモデル」を確立したわけではない。金融ジャーナリストの森岡英樹とジャーナリストの永井隆の両氏が、3メガバンクの問題点を指摘する。
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「今の銀行は単なる国債買い取り機関だ。どこも同じで特徴がないなら、メガバンクは3つもいらないのではないか」
日本を代表する、ある事業会社の首脳は厳しく指摘した。10数年前に日本を揺るがした金融危機の再来を防ごうと、3メガバンクは自らの健全性を高めることに注力してきた。その結果、かつては6~10%あった不良債権比率は各行とも1~2%台となり、中核的自己資本(Tier1)比率でも12%以上を確保。主要国の当局で構成するバーゼル銀行監督委員会が定めた厳しい新自己資本規制「バーゼルⅢ」にも対応できる見通しである。
「日本のメガバンクのバランスシートは今、世界の金融機関と比べてもピカピカだ」
ある証券アナリストはそう語るが、それは半面、貸し出しが停滞していることを意味する。つまり、「銀行本来の業務」を疎かにしているということでもある。
実際、3メガバンクの主な収益源は国債など債券の売買。株式市場の低迷で保有している株式が値下がりし、各行は多額の減損処理をしたが、国債の売買益によりこれをカバーしている状況だ。
冒頭の指摘は、3メガがどこも企業に血液(マネー)を流し込む本来の役割を果たさず、結果として実体経済を悪くしたことへの怒りの声である。
さらに言えば、預金金利・住宅ローン金利や各種サービスなどを見ても、きわだって特徴的なメガバンクはないというのが実感ではないか。今後、本格的に世界の金融機関との競争に晒される3メガバンクが生き残るには、新しいビジネスモデルを構築していくことが必須だ。
※SAPIO2013年3月号