竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「解体業者の不手際で店が大損害。賠償責任をどう取らせるか」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
私は商店街で靴の修繕店を営んでいます。先日、隣の店舗が閉鎖され、新しい店のリフォームのため解体作業を行なったのですが、その際にスプリンクラーを壊し、私の店も水浸しになり、損害を受けました。しかし業者は賠償の交渉に応じません。この場合、どのような法律的手段を取ればよいですか。
【回答】
賠償請求相手の第一の候補者は、解体業者です。注意不十分でスプリンクラーを壊したとすれば過失があり、過失と相当因果関係のある損害を賠償する義務を負います。スプリンクラーを壊せば、隣の店舗が水浸しになることが予見可能なら、相当因果関係があり、解体業者の責任は免れません。
往々にして請負業者は注文上の指図に従っただけだと、逃げ口上をいうことがあります。これは民法716条で、「注文者は、原則として請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わないが、注文又は指図について過失があったときは責任を負う」とされているからです。注文主が急がせ、スプリンクラーへの慎重さを欠く扱いを指示したような場合です。
しかし、注文者の指示に過失があっても、当然に請負業者の過失が否定されるわけではなく、注文者の過失とは別に業者としての過失があれば、責任は免れません。その場合には、解体業者とともに、注文者にも賠償請求できます。
請求するためには、修理費用、水浸しで使えなくなった什器備品の取り換え代、営業損失等の損害額を計算し、水浸し状態や修繕工事の写真、工事業者の見積もりや領収書、閉店期間や売り上げ減少が分かる資料などを揃えることが必要です。そして解体業者や、場合によっては注文主に賠償を請求すればいかがですか。彼らが受け入れない場合には、裁判所の力を借りるしかありません。
説得が効きそうなら、簡易裁判所の調停をお勧めします。修理の場合、60万円以下であれば、即決裁判が期待できる簡易裁判での少額訴訟手続きができます。これを超えて140万円以下なら簡易裁判所、それを超えると地方裁判所の管轄です。なお、他に支払い督促という手続きもあり、裁判所の窓口で相談するのがよいでしょう。
※週刊ポスト2013年3月8日号