アベノミクスによる景気回復への期待感から、高級品が次々と売れ始めていると百貨店等の関係者からは聞こえてくる。だが、庶民に身近なスーパー業界からは、やはり「まだまだ厳しい」との声が一様に聞こえてくる。
「子育て世代のファミリー層は給料も上がらず家計は厳しいので財布の紐は固い。本格的な景気回復を願うばかりです」(イオン・コーポレートコミュニケーション部)
では、昨年は「マルちゃん正麺」(東洋水産)、「モンスターエナジー」(アサヒ飲料)、「メッツコーラ」(キリンビバレッジ)などのヒット商品があった食品・飲料業界の動きはどうか。
商品ジャーナリストの北村森氏は、こう話す。
「景気の底打ち感から『安さ一辺倒からの脱却』という動きは出ています。PB(プライベート・ブランド)の中でも『プレミアムPB』が主流となりつつあります」
PBとは大手スーパーなど小売店が独自の商標で販売展開する商品だ。イオングループの「トップバリュ」やセブン&アイ・ホールディングス、イトーヨーカドーなどが手掛ける「セブンプレミアム」などがその代表格として知られる。
「安くて品質もイマイチだったPBだったが、今年は各社とも値段はやや高めだが品質に拘った『プレミアムPB』に力を入れ始めています。消費者は震災以降、節電・節約で我慢してきたがそれにも限界がある。そこにアベノミクスが拍車をかけた。一気に散財するほどではないが何割増しで支払っても商品から満足を得たいというのが今の消費者心理です」
これを裏付けるように、安価を競ってきたファストフード業界でもヒット商品に変化が出てきた。
日本ケンタッキー・フライド・チキン(渋谷区)では数量限定で「ケンタッキーチキンライス」(450円)を2月7日から販売、すでに予想を超える約30万個(2月19日時点)が売れまくっている。やや高額ながら、商品のグレードアップを消費者は歓迎したようだ。
大手菓子メーカー、江崎グリコ(大阪市)も昨秋から大阪の百貨店限定で、同社看板商品の「ポッキー」を高級にしたような棒状のチョコレート菓子「バトンドール」(20本入り481円)を販売したところ、今では連日長蛇の列ができている。
前出・北村氏は、旅行のお土産品でも1000円以上のやや高額帯が売れ筋になってきていると指摘する。
「『白い恋人』で有名な石屋製菓の『白いバウム』(1260円)が人気でよく売れています」
どれも、従来のヒット商品にプレミアム的要素を取り入れているのが特長だ。
※週刊ポスト2013年3月8日号