現在、岩手県の盛岡市中央公民館で『絵本プロジェクトが贈る絵本原画展』(5月12日まで)が開催されている。ここに展示されている88作品のうち、『白鳥の湖』(リスベート・ツヴェルガー)、『ルピナスさん』(ビネッテ・シュレーダー)など、実に半数以上の47作品は、皇后美智子さまが所蔵なさっているものだ。
この原画展を主催しているのは、『3.11絵本プロジェクトいわて』。大震災後、いち早く被災地の子供たちに絵本を届けるための活動を始めたボランティア団体で、これまで全国から寄せられた絵本・児童書は23万冊を超えた。
また被災地で困難を乗り越えようとしている子供たちに、絵本の読み聞かせなども行っている。もちろん、今回の原画展の入場料も支援活動に充てられるという。
このプロジェクトの代表を務める末盛千枝子さん(72才)は、世界的にも知られた児童図書編集者で、美智子さまの著書を出版したこともあり、これまで文学を通じて親交を深めてきた人物だ。
その末盛さんが2年前をこう振り返る。
「私は震災直後に“被災地の子供たちを元気づけたい”と被害が大きかった宮古市(岩手県)を訪ねました。そんなときに皇后さまからお電話をいただき、宮古市を訪問したときの話をしたのです。すると皇后さまは“もう(被災地に)入られたのね…”とおっしゃられました。そのときは両陛下が被災地を慰問される前で、一刻も早く被災者を励ましたいのに、なかなか現地に駆けつけることのできないもどかしさに苦悩されていらっしゃるようでした」
ご自身が慰問できない代わりなのだろうか、美智子さまは電話口で末盛さんにこうお伝えになったという。
「私のところにある本を送ります」
このとき届いたのが、絵本『たつのこたろう』(松谷みよこ著)と『三月ひなのつき』(石井桃子著)の2冊だった。以来、たびたび2冊ずつ、美智子さまから末盛さんのところに絵本が届くようになる。
「ただ送ってくださるのではなく、子供たちが元気になるような皇后さまのメッセージが伝わる本ばかりでした」(末盛さん)
こうして美智子さまは絵本を通じて、陰ながら末盛さんたちの活動を支援なさるようになっていった。
そして、昨年11月初めのこと。
「震災直後、皇后さまが“私が持っている絵本の原画で役立つことはないでしょうか。協力します”とおっしゃってくださっていたことを思い出し、原画展の開催をご相談しました。すると皇后さまはお忙しい合間を縫って、私を御所に招いてくださいました。100枚近い原画が用意されていて、1枚1枚、皇后さまの説明を受けながら、展示する作品を一緒に選ばさせていただきました。
皇后さまは“これらを見ていると幸せになれる”とおっしゃっていましたが、その喜びを被災者のかたがたと分かち合いたいというお気持ちを会話の中にひしひしと感じることができました」(末盛さん)
※女性セブン2013年3月28日号