西川文二氏は、1957年生まれ。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導している。その西川氏が、動物はウソをつくのか、について解説する。
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いきなり質問。動物はウソをつくか。察しのいいご貴兄であれば、その通り、4月1日のエイプリルフールにちなんでの、質問。
有名なのはトリ。え、サギじゃありませんよ。もちろん鷽(うそ)でもない。ご貴兄が、金曜日の終電まぎわに良くやるアレ、アレです。チドリ足。あ、足は余分でしたね。チドリ。
チドリってのは、木の上じゃなくて、地面に巣をつくる。卵や幼い雛が狙われたらひとたまりもない。そこで捕食者が近づくと、よろよろとケガのフリして、捕食者をおびき寄せ巣から離す。このケガをしてるようによろよろ歩くのが、元祖チドリ足。
これ、偽傷っていうんですけどね。この偽傷みたいの、犬もやる。
ケガをして不自然な歩き方をしてた犬。ケガは完治してるはずなのに、いつまでたっても、歩き方が不自然。で、隠しカメラで犬の行動を観察した。するとどうでしょう、飼い主がいる時には不自然な歩き方なんだけど、飼い主がその部屋からいなくなると、なんとその犬、正常な歩き方をしてた。
犬に限らず動物ってのは、結果的にいいことが起きた行動の頻度を高める。当コラムの読者ならおなじみの、この学習パターンからこの犬は、足が悪いフリをするっていう行動を、学習したってこと。
もちのろん、この場合のいいことってのは、飼い主に注目されるってこと。飼い主がいない時には、注目されない、いいことは起きないので、足が悪いフリはしない。
※週刊ポスト2013年4月12日号