中国で発生し、死者まで出ている鳥インフルエンザが今後、日本に上陸するとすれば、どこが感染源となるのか。
1つは、ウイルスを持った鳥が日本に飛来し、それが日本人に感染するパターンである。現在は渡り鳥が中国からシベリア方面へ渡る時期で、日本に立ち寄る可能性も高い。鳥インフルは鳩やスズメ、カラスにもうつることから、防衛策は極めて難しいとされている。
実は昨年11月、国立環境研究所が鳥経由の感染ルートを検証し、「日本における鳥インフルエンザウイルスの侵入リスクマップ」を作成した。それによると、渡り鳥が来やすい山陰地方や九州地方、北海道が高リスク。
また、渡り鳥から感染する危険性のある鳩やカラスの多い東京、大阪、名古屋の大都市圏も感染リスクが高いとされる。もちろん感染が養鶏場の多いエリアで広がれば、ヒトに感染しなくても殺処分などで経済的な被害は甚大となる。
さらに危険なのは、疑いが消えないヒト-ヒト感染が爆発した場合だ。日本には年間150万人の中国人観光客が訪れているが、なかでも4月は夏季に次いで観光客の多い時期だ。
「感染は、チャイナタウンがある池袋や横浜より、観光客が大挙する秋葉原や銀座などで広がる可能性が高い。とくにヒトが密集した場所は感染リスクが高い場所といえる」(家畜微生物学の後藤義孝・宮崎大学教授)
最近では空気清浄機を買いに秋葉原を訪れる中国人が多い。人気の最新型空気清浄機にはウイルス抑制機能が付いているが、感染者が展示品に触れた場合には、むしろ感染するリスクが高まってしまう。
リスクがあるのは日本人も同様だ。5月はゴールデンウィークに海外旅行者が急増する。中国への旅行客が増えれば、「もらってくる」可能性は当然高まる。厚生労働省医系技官で羽田空港検疫技官の木村盛世・医師はいう。
「中国を避けて台湾などを選ぶケースが増えているが、感染リスクについては中国と大差がない。多くの人の出入りがある現在、そもそも入ってくるウイルスを未然に防ぐという発想自体が、幻想でしかありません」
※週刊ポスト2013年4月26日号