ライフ

修理業者がコーヒーこぼしてPCデータ消失 賠償求められるか

「修理を依頼したパソコンが、業者の不手際で重要なデータ類を失った。賠償を負わせたい」――果たしてそれは可能なのか? 弁護士が回答する。

【質問】
 デザイン会社を営んでいます。先日、パソコンが故障したため業者に修理を依頼したのですが、その業者がコーヒーをハードディスク本体にぶちまけ重要なデータ類が飛びました。バックアップを取っていなかった、こちらにも責任はありますが、業者にも賠償を負わせたい場合、どうすればよいですか。

【回答】
 パソコン修理業者がコーヒーをハードディスク本体にぶちまけ壊したことが、業者の責任であることは間違いありません。問題はその責任の範囲です。

 あなたからパソコンの修理を請け負った業者は、その仕事を完成させる義務があります。不可抗力以外に、約束した仕事を果たせなかった責任である債務不履行責任は免れません。

 コーヒーのぶちまけは明らかに過失ですから、この債務不履行責任があります。その場合、これによって発生した損害を賠償する義務があることは当然で、ここまでは業者も認めているのでしょう。つまり、パソコン本体の物の価値相当の損害賠償責任は否定しないはずです。

 データが飛んでしまったことによる損害は、その程度は別にして、当然に業者の責任かは議論があり得るところです。債務不履行による損害賠償の責任の範囲は、民法で原則として通常予見できる範囲のものに限られ、それ以外の特別な事情によって生じた損害の場合には、その事情が予見できた時には、賠償責任の範囲に含まれるとされているからです。

 さて、使用中のパソコン修理の場合、通常はソコにデータが入っているのが当たり前です。そうすると修理作業に不手際があれば、データが毀損することも予見できる範囲内です。そうであるなら、業者のデータ毀損は責任範囲といえると思います。

 しかし、業者は事前にデータのバックアップを求めるのが一般的です。契約書や注文請書にそうした表記がありませんでしたか。もし、バックアップを求められているのに、あなたが取っていなければ、責任追及は無理です。もっとも、データが飛んだ損害をどのように算定するかは難しいところです。

 解決の道筋がつかないようなら、簡易裁判所に民事調停を起こし、話し合ってみたらいかがですか。

●竹下正己/1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2013年5月3・10日号

関連キーワード

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン