ベストセラー『五体不満足』(講談社刊)で知られる作家の乙武洋匡さんが、東京・銀座の有名レストランから入店を拒否された一件をツイッター上で明らかにした。店側を非難する者もあれば、店名を晒した乙武さんを責める声もあったが、この件が日本における身障者介助のあり方に一石を投じたことは間違いない。
一昔前に比べれば、身障者に対する理解は広がっている。しかし今回の一件は、われわれの社会がまだ身障者介助という問題に対して成熟していないことを知らしめた。社会は、身障者に対してどう向き合うべきなのか。専門家に解説してもらった。
【迷惑な「声かけ」も】
視覚障害者などに介助の声を掛ける際は慎重に。
「日常的に利用する駅などでは、視覚障害者は歩数を数えるなどして自分の位置を確認しています。無闇に声を掛けると状況がわからなくなってしまうことも」(社会福祉法人プロップステーションの竹中ナミ理事長)
【「声かけ」のタイミング】
それでは視覚障害者に声をかけるタイミングは?
「たとえば信号が青になってもわたらず待っていたり、駅のホーム上で電車に乗れずにためらっている時。新宿駅の駅前広場など、広い場所での移動も難しい。迷っている動きをしている人には声をかけてほしい」(東京都視覚障害者生活支援センター・長岡雄一氏)
【大事なのは「別れ際」】
視覚障害者の案内で重要なのは「別れ際」。「現在どういう状況下にあるのか、体がどこを向いているか、足もとの段差の有無、電柱はないかなどできるだけ詳しく教えてほしい」(長岡氏)
【接客は「相手を間違うな」】
身障者に介助者がついている場合、接客スタッフは、つい介助者のほうに“どんな品物をお求めですか?”と話しかけてしまいがち。
「外出できる方の多くは、きちんと意思表示できる。“何で私の買い物なのに私に聞いてくれないの!”と悲しんでいる方は多い」(前出・竹中理事長)
身障者本人に目を合わせて話しかけるのは当然だ。
【子供に「失礼だから」はNG】
親子連れで歩いていると、子供が身障者の車いすに興味を持つことも。しかし親が「失礼だから」と子供を遠ざけようとするほうがかえって失礼だ。
「“気の毒な人”“大変そうだ”という親の先入観が身障者を傷つけます。健常者と変わらない態度で接して」(竹中理事長)
※週刊ポスト2013年6月7日号