高度成長を遂げた日本では衛生環境の改善、食生活の欧米化により自己免疫疾患が増えている。多発性硬化症もその一つで、高緯度、先進国、白色人種に多い。欧米に比べ日本の患者数は10分の1程度だが、20~30代の女性に多く発症し、近年働き盛りの男性にも患者が増えている。
順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科・多発性硬化症専門外来の横山和正医師に話を聞いた。
「多発性硬化症は自身の免疫細胞が中枢神経を攻撃し、神経細胞からの指令を伝える経路である神経軸索の周囲を覆う髄鞘(ずいしょう)が障害されます。電線に例えると、絶縁体の役目を担っている被覆部位(髄鞘に相当)がネズミにかじられ漏電してしまうようなものです。
症状は手足の感覚障害、麻痺、視力低下、めまい・ふらつきなど様々です。症状によって眼科や耳鼻科、整形外科、脳外科を受診しますが、診断がつかず神経内科で確定診断されることが多いのです」
軸索が保たれている限りは2週間から1か月で髄鞘が再生し、症状は軽快もしくは消失する。診断は神経症状が再発しているか、中枢神経系の2か所以上に病巣があるかどうかなど時間的・空間的多発性の有無で判断する。同時にMRIの画像検査や髄液検査も確定診断に重要である。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年6月14日号