「魔」が潜むといわれる参院選だが、選挙予測の第一人者であるジャーナリスト・野上忠興氏によれば、現在の状況を踏まえると自公の過半数は堅いという。だが、安倍政権の多難はそこから始まる。野上氏が指摘する。
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国民の一大関心事は景気回復だ。参院選後には消費税を予定通り来年4月から引き上げるかの決断を迫られる。「景気回復がなければ税率は上げない」と公約した安倍氏には、金融緩和、財政出動、成長戦略という3本の矢による景気回復を国民に実感させる具体的な成果が求められる。そしてそれは“3本目の矢”の成長戦略にかかってくる。
その成長戦略がなんとも心細い。安倍氏の肝煎りで設置された産業競争力会議のとりまとめでは、一時検討された「混合診療の解禁」「企業の農地保有解禁」「解雇規制の緩和」などは盛り込まれない方針だ。医師会や農協、世論の抵抗が強そうな文言を省いたとみられても仕方あるまい。
「3本目の矢は本来、企業が新しいビジネスに打って出やすいように官僚の規制を取り払うものでなければならない。成長産業を国が見定めて税金を投下するやり方だけにしたら、真の景気回復など望めない」(安倍ブレーンの一人)
不安要素は他にもある。第一次安倍政権の退陣の引き金となった首相本人の健康問題だ。会食やゴルフなどでの“健康体アピール”ですら、不安の裏返しだとする証言もある。
「会食で食事中の写真撮影をNGにしたと聞く。『どれくらい食べたか』などの記録を残したくないのでしょう。マスコミに健康不安を書かれたくないから宴席では日本酒やワインを飲んでみせるが、気心の知れた相手の時はレッドアイ(ビールのトマトジュース割り)にして体調に気を遣っている」(自民党幹部)
持病の「潰瘍性大腸炎」にはストレスが禁物とされる。飯島勲・内閣参与の訪朝に米韓が反発した時などは「総理は非常にナーバスになっていた」(側近)という。総理の椅子に座る期間が長くなれば、ストレスが増すのは当然だ。
※SAPIO2013年7月号